ボッシュ:カメラベースのライフセーバー、車両による乗員のモニター・ 見守りを支援
MotorFan / 2019年12月17日 15時50分
マイクロスリープや注意散漫、シートベルトの非着用など、車内での出来事が重大な事態につながる可能性がある。危機的な運転状況を回避し、時には事故を防止するために、車両のセンサーは将来的には道路だけでなく、ドライバーや乗員をモニターするためにも使用されると考えられる。こうしたニーズに対応するため、ボッシュでは、カメラと人工知能(AI)を備えた新しい車室内モニタリングシステムを開発した。
「ドライバーと乗員の動きを車両が把握できれば、運転はより安全で便利なものになります」と、ロバート・ボッシュGmbH取締役会メンバーのHarald Kroeger氏は述べている。
欧州では、2022年以降に発売される新車に対して、眠気や不注意をドライバーに警告するなどの安全技術が標準的な装備となる予定とされている。ボッシュが開発する本システムも、2022年に生産段階に入ることを見込んでいる。なお、欧州委員会では、新たな安全基準の導入により、2038年までに2万5000人以上の死亡者と14万人を超える重傷者の発生を防止できると見込んでいる。車内で起きていることをモニターすることで、自動運転車両の根本的な問題の一つが解決されることが期待されている。例えば、高速道路上で自動運転モードの車両がドライバーによる運転に切り替わる際に、ドライバーが眠っていないか、新聞やスマートフォンに集中していないかを、車両が確認する必要がある。
スマートなカメラが常時ドライバーをモニター
時速50kmで車両が走行する場合、ドライバーが居眠りやスマートフォンを見ているわずか3秒間で、車両は42メートル進んでしまう。これに付随するリスクを、多くの人が過小評価している。
国際的な研究によると、交通事故の10件中約1件は、ドライバーの不注意や眠気が原因。ボッシュの車室内モニタリングシステムは、こうした危険を検知してドライバーに警告し、走行を支援する。例えばステアリングホイールに組み込まれたカメラが、ドライバーの重くなったまぶたや不注意・わき見、乗員や後部座席を向いたこと等を検知する。AIは、検知したドライバーの情報を元に適切な解析を行う。解析された結果をもとに、自動車メーカーの要求仕様や法的要求などに従って、注意散漫に対する警告、疲れているドライバーへの休憩の推奨、状況によっては車両の減速が行われる。
「カメラとAIにより、車両はライフセーバーになるのです」と、Kroeger氏は語る。ボッシュのエンジニアは、インテリジェントな画像処理アルゴリズムと機械学習を駆使して、ドライバーの実際の動きを理解できるようにシステムに学習させている。ドライバーの眠気を例に取ると、実際の運転状況の記録を使って学習する本システムでは、まぶたの位置の記録とまばたきの頻度をもとに、ドライバーの実際の疲労度を検知する。こうして、状況に応じて適切に警告を発し、ドライバーアシスタンスシステムを用いて介入(intervention)することも可能となる。
不注意や居眠りに対して警告音を鳴らす警告システムは、将来的には非常に重要になることから、ユーロNCAP(ヨーロッパ新車アセスメントプログラム)では、2025年までに車両安全性のためのユーロNCAPアセスメントのロードマップに組み込まれる予定。なお、車室内モニタリングシステムからもたらされる情報を評価するのは車内のソフトウェアのみで、取得された情報の保存や第三者へは譲渡されない。
ハンドル操作の責任が車両からドライバーへ、そしてまた車両へ
車両が自動運転をし始める時、ドライバーの状態を把握することは極めて重要になる。自動運転モードでは、車両はドライバーからの介入なしで高速道路を走行する。しかし、工事区域などの注意が必要な状況や高速道路の出口が接近した際には、再びドライバーに運転をバトンタッチできなければならない。自動運転中でも、ドライバーはいつでも安全にステアリングを握れる状態でいる必要があるだけでなく、カメラはドライバーが眠っていないことを確認し続ける。ある一定時間ドライバーの目が閉じている場合は、警告音が鳴る。また、本システムはカメラの記録を分析し、ドライバーの現在の動作や、ドライバーの介入要求に対する準備状態の判断を行った上で、運転を車両からドライバーにバトンタッチする時間を推定する。「安全性の高い自動運転には、ボッシュのドライバーモニタリングシステムが不可欠です」と、Kroeger氏は言う。
車両はカメラで車室内全体をモニター
さらにボッシュの新しいシステムは、バックミラーの上または下に取り付けられたカメラにより、ドライバーだけでなく助手席や後部座席のすべての乗員をモニターする。後部座席の子供が不注意にシートベルトを外すと、カメラが感知し、ドライバーに警告する。後部座席の乗員が前方に身を乗り出し過ぎたり、隣のシートに足を投げ出していると、事故の際にエアバッグとベルトテンショナーは正しく乗員を保護することができない。車室内モニタリングカメラは、乗員が座っているポジションの情報を利用し、エアバッグとベルトテンショナーを最も有効に働く様に調整することも可能だ。ベビーベッドが置かれている場合は、車室内モニタリングシステムがそれを検知し、乗員シートのエアバッグを作動させないようにすることができる。
駐車された車両内は子供にとって、時に大変な危険をもたらす。子供が車内に取り残されていたり、大人に気づかれずに車内に入り込んだことが原因で、米国では2018年に50名以上の子供の命が失われている(出典:KidsAndCars.org)。ボッシュの新しいシステムはこうした危険を検知することができ、迅速に両親のスマートフォンに警告メッセージを送ったり、緊急時には救急サービスへの通報を可能とする。現在米国で討議されているHot Cars Act法案が示すように、この課題に対する技術的ソリューションに関心が寄せられている。
利便性を向上するカメラ
ボッシュの新しいシステムは、運転の利便性も高める。車室内モニタリングカメラは、これから誰が運転するのかを判別し、予め設定された個人的な好みにあわせてバックミラー、シートポジション、ステアリングホイールの高さ、インフォテインメントシステムを設定する。また、このカメラは、目やジェスチャーを用いたインフォテインメントシステムのコントロールにも利用することができる。
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