「武装集団の勧誘を断ったら──」 緊張が続くマリ北部、村から逃れた人びとへの援助を
国境なき医師団 / 2024年8月19日 10時19分
西アフリカのマリで、多くの住民が避難を強いられる事態が起こっている。武装集団とマリ国軍との間で緊張が高まっているためだ。
今年4月末、北部のトンブクトゥ州グルマから約2000人の住民がニアフンケの町に逃れ、その後も避難民の数は増加。国境なき医師団(MSF)は、簡易診療所を設置して援助にあたっている。
家族を残して逃げた人も
6月までに、613世帯からなる約4000人がニアフンケに避難した。武装集団からの勧誘を避けるために逃れた人や、一方の勢力の共犯者だと非難されて逃げてきた人たちもいる。何かを持ち出す間もなく、農場や家畜のみならず、家族すら置き去りにして逃げざるを得なかった人が多い。彼らは主にダゴジ村、フルウ村、グウンダムトゥスケリ村、マンジュブグ村から来ている。
こうした経験は、心に大きな影響を与えている。ダゴジ村の農民であった23歳の青年はこう話した。
「武装集団が若者を兵に取ろうと勧誘しに来ました。でも私は拒否して従わなかったのです。それからというもの、彼らは私を抹殺しようとしてきました。ついには銃を突きつけられたのです。怖くなって、ニアフンケまで泳いで逃げようと川に飛び込みました。そんな私を彼らは発砲しました。しかし幸い、当たらずにすんだのです」
避難先にいても、恐怖感が続き、誰かから追われている感覚が離れない人たちも少なくないという。また、畑と家畜で生計を立ててきた人が多いため、それらを失った人びとはもはや生活を送れない状況に置かれている。誰も面倒を見てくれる人はおらず、畑仕事のために借りた借金を返済するあてもない。
過密状態の環境で感染症が広がる
ニアフンケに逃れてきた人びとは現在、学校の教室に詰め込まれて生活を送っている。過密で不衛生環境は、病気のまん延につながる。ニアフンケのバリコモ・カレンベ医師はこう話す。 「呼吸器感染症や感染性皮膚疾患が増えています。呼吸器感染症では、治療した618人のうち、半数以上が5歳未満の子どもでした。栄養失調の子どもも多く、避難民キャンプでの診療でスクリーニング検査を受けた子どもの66%が急性栄養失調でした。避難民の多くは家族や財産を失い、心の支えを必要としています」
MSFは、4月に大勢の人びとがニアフンケに逃れたことを受けてすぐ、無償で基礎医療を提供する簡易診療所と、給水所を設置。また、救援物資のキットを600組配布した。4月から6月までの間に、避難してきた4000人のうち1202人の女性がケアを提供した。そこには、産前健診96件、分娩15件が含まれる。
MSFは飲み水や医療を利用できるようにしたものの、満たされていなニーズは膨大だ。いま多くの人が学校で生活しているが、新学期の開始を間近に控え、授業を受ける場所の確保も求められている。心のケアも、いますぐ始められなければならない。MSFは国内外の人道援助団体に対し、避難民への支援を強化するよう働きかけている。
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