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広島大など、中性子星の自転の急加速現象「グリッチ」の仕組みの一端を解明

マイナビニュース / 2024年4月25日 20時36分

通常の中性子は、物質を構成するフェルミ粒子(フェルミオン)の仲間だが、2つの中性子が対を組むと、力を媒介するボーズ粒子(ボソン)となる。その結果、フェルミ粒子とは異なって「パウリの排他律」に縛られなくなり、中性子は量子流体となる。その際、「S波対」と「P波対」という2種類の組み方があり、中性子星内部の外側(クラスト)では前者、内側(コア)では後者という二重構造が形成されていると考えられている。今回の研究では、S波対は1本の量子渦(整数渦)を、P波対は2本の量子渦(半整数渦)をそれぞれ作るという、2つの異なる性質に着目し、それぞれの量子渦が複雑に絡み合うことが見出されたとした。

クラストからコアへ向かう場合は、S波対の1本の整数渦からP波対の2本の半整数渦に別れる(このような構造は「ブージャム」と呼ばれる)。反対にコアからクラストへ向かう場合は、2本の半整数渦が1本に合体することになるが、多量の量子渦が存在するため、ほかの2本の半整数渦の一方とくっつく場合がある。そのため、量子渦は隣同士で絡み合った状態になるのである。

今回の研究では、そのような考えに基づき、中性子星全体において複雑で巨大な量子渦のネットワークが形成されるという仮説が立てられた。その巨大ネットワークの回転の勢いがコアからクラストへ突如移行することで、中性子星の自転が急加速し、つまりグリッチが起こると結論付けたとする。

最後に、量子渦のネットワークの分布について、シミュレーションが行われた。すると、スケーリング則が発見され、しかもその指数はα≈0.8±0.2だったという。これは、上述した観測データから算出されたα≈0.88±0.03に非常に近い値だ。このように、量子渦による巨大ネットワークは中性子星のグリッチを自然に再現することが示されたとした。

今回の研究成果に対して研究チームは、量子と天体という、大きさのまったく異なる2つの世界が、トポロジーを通して見ると表裏一体であるという考えは、今後の自然観に対する新たな基盤になるかも知れないとしている。
(波留久泉)



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