神戸大など、汗孔角化症の一部は「エピゲノム異常」で起きることを確認
マイナビニュース / 2024年4月25日 20時35分
遺伝子に対して「メチル化修飾」という印がつけられるエピゲノム制御は、細胞の分化やタンパク質の産生などにおいて必須の仕組みである。しかしそれが異常を来し、間違った遺伝子に印を付けてその働きをオフにしてしまうと、細胞の分化がうまくいかなくなったり、異常なタンパク質が産生されてしまったりする可能性が出てくる。
その確認のため、8名の患者の皮疹細胞のエピゲノムの解析が行われた。すると、まさに予想通りで、患者の皮膚の一部の細胞が、FDFT1の1つに胎生期に起こったエピゲノム異常が発見されたという。やはりツーヒットだったのである。さらに、ツーヒットのどちらもエピゲノム異常の場合は、幼少期から身体の一部に線状に皮疹があるタイプになることも確認されたとした。
今回のFDFT1も含め、汗孔角化症の原因遺伝子はみな細胞がコレステロールを合成するための反応を司る酵素をコードしている。ツーヒット細胞は、自身でのその合成が不可能になるだけではない。反応が途中で止まってしまうこともあり得るため、異常な代謝産物が細胞に蓄積した結果が皮疹となっている可能性が考えられるとした。
さらなる研究により、スタチン軟膏の外用による治療が、FDFT1の欠失による汗孔角化症の紅みや痒みの症状に効果的なことも判明。これは同薬剤がコレステロール合成経路の上流を遮断することから、異常な代謝産物の蓄積を抑える効果を発揮したことが考えられるという。また、汗孔角化症の原因がFDFT1のエピゲノム異常かそれ以外かを調べることで、汗孔角化症になる体質が遺伝するリスクがあるのかどうかの診断ができることも明らかにされた。汗孔角化症は遺伝性疾患とされていたが、遺伝性ではないものもあることが確認されたことは、遺伝カウンセリングのための重要な発見としている。
なお、エピゲノム異常が関連する疾患はほかに一例しか発見されていないが、これまで原因不明の疾患の中に、同様の仕組みの疾患が潜んでいる可能性があるという。今回の発見に引き続いて、エピゲノム異常による疾患が他にも見つかることで、その疾患の研究が進展することが期待されるとしている。
(波留久泉)
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