OIST、生命誕生前の原始の海でタンパク質などが移動するための仕組みを発見
マイナビニュース / 2024年4月26日 16時19分
pH勾配は、分子がどのように表面張力の高い領域から低い領域へ流れるかを説明する「マランゴニ効果」を促進する。表面張力は、糊のように表面の分子をつなぎ合わせるのに必要なエネルギーの尺度。pHが高くなると、この接着力が弱くなり、分子が広がって表面張力が低下し、分子が動きやすくなるのである。
2つの合成液滴が十分に近づくと、それぞれのハローが相互作用し、それらの間の環境のpHが上昇、2つが一緒に動くようになる。液滴の反対側の端では表面張力がまだ強いため、液滴は表面が接触するまで形を保ち、液滴内部の凝集力が表面張力に打ち勝ち、合体する。大きな液滴はアンモニアの生成量が多く、表面積が広くなる(よって、表面張力が低下する)ため、大きい液滴が小さい方の液滴を引き寄せるという。
この液滴の開発により、研究チームは生物学的な動きに関する根本的な疑問に対する答えに一歩近づいたとする。今回の研究は、その最初の生命が誕生した時期の原始スープで、最も初期の生命体がどのように方向付けられて動いたのかについての知見が得られたとした。それと同時に、生物学的な発想からインスピレーションを受けた新材料の開発にもつながるとしている。
生命が地球のどこでどのように誕生したのかは、現在は確かめる術がないため、正解はもちろんわかっていない。しかし冒頭でも述べたように、タンパク質などの有機分子が原始スープ(海洋)の中で徐々に集まって洗練されて生命が誕生したのだとすれば、液滴が今回の研究で確認されたような移動メカニズムを持っていることは、有益だったと考えられるとする。この移動によって、酵素がさまざまな物質を触媒する原始的な代謝経路が形成され、最終的に化学的な勾配が発生して液滴が集まり、より大規模で洗練された共同体につながった可能性があるとした。
また今回の研究成果は、新技術の手掛かりも提供するという。単純な液滴が化学的な濃度勾配のおかげで移動できることが示されたことから、将来的には、その勾配を感知したり反応したりする技術を、マイクロロボティクスやドラッグデリバリーなどに応用することが考えられるとしている。
(波留久泉)
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