OIST、有機電気化学トランジスタのON時に生じるタイムラグの原因を解明
マイナビニュース / 2024年5月7日 15時48分
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は5月2日、「有機電気化学トランジスタ」(OECT)はスイッチを入れると、電流が目的の作動レベルに達するまでにタイムラグがあったが、OECTはオンになるには2段階のプロセスを経る必要があることが原因であることを突き止めたと発表した。
同成果は、OIST パイ共役ポリマーユニットのクリスティーヌ・ラスカム教授、米・ワシントン大学のJiajie Guo大学院生らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の材料科学および材料工学全般を扱う学術誌「Nature Materials」に掲載された。
ペースメーカーや血糖モニターのような体内埋め込み型デバイスには、生物(生化学)とエレクトロニクスの間を橋渡しできる部品が不可欠であり、そうした部品の1つがポリマーで構成されるOECTだ。塩などの生体物質を含む液で満たされた環境で作動し、埋め込み型バイオセンサのようなデバイスに電流を流すことができる。OECTの機能はポリマーの構造、特に柔軟性が重要で、またそのサイズはデジタルデバイスの電子基板と比べると大きいことも特徴の1つである。
OECTは、スイッチを入れれば電流が流れ、切れば電流が遮断されるという、原理的には電子機器のトランジスタのように作動する。より正確には、イオンの流れと電子の流れをつなぐことで作動する仕組みであり、生物とエレクトロニクスを結びつけたような形となっているのが特徴だ。
OECTで長らく解明できていなかったのが、スイッチを入れても電流が目的の作動レベルに達するまでにタイムラグがあるというクセだったとのこと(スイッチを切った時は、タイムラグなく電流は即座に低下する)。そこで研究チームは今回、このタイムラグを発生させている原因の解明に取り組むことにしたという。
今回の研究では、ポリマー材料をベースに、電荷に反応して色を変える独自のOECTを開発、研究対象とし、OECTのスイッチを入れたり切ったりした時に何が起こるのかが顕微鏡で詳細に観察され、スマートフォンのカメラで正確に記録された。それにより、OECTのタイムラグの背景には、2段階の化学的プロセスを経る必要があることが明確に示されたという。それこそが、タイムラグの原因だったのである。
OECTのスイッチがオンになった時の第1段階では、イオンの波面がトランジスタを横切る。そして第2段階で、より多くの電荷を持つ粒子がトランジスタの柔軟な構造に侵入し、トランジスタをわずかに膨張させ、電流を作動レベルまで引き上げることが突き止められた。
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