1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

九大、海馬の神経新生を用いればPTSD症状を減弱できる可能性を確認

マイナビニュース / 2024年5月10日 18時30分

画像提供:マイナビニュース

九州大学(九大)は5月9日、マウスを用いた動物実験で、「神経新生」による海馬神経回路のリモデリングが、トラウマ記憶の忘却を促し、PTSDに類似した症状を減弱させることを明らかにしたと発表した。

同成果は、九大大学院 薬学研究院の藤川理沙子助教らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の分子精神医学を扱う学術誌「Molecular Psychiatry」に掲載された。

PTSDは、生死に関わるトラウマとなるような経験を忘れられず、自分の意志とは無関係に思い出して恐怖を感じてしまう疾患。その結果、安全な場所にいても被害が続いているように感じ、不安や緊張状態が続いてしまう。既存の治療法で効果の得られない患者も存在するため、新たな治療法の確立が望まれており、研究チームは今回、記憶において重要な働きをする脳部位である海馬の神経新生に着目することにしたという。

神経新生とは、ヒトを含むほ乳類の海馬内の「歯状回」において、大人になった後も日々新たな神経細胞が産出される現象のことをいう。研究チームの先行研究によれば、学習後に神経新生を増加させると、海馬依存記憶の忘却が促されることがわかっていた。しかし、トラウマ記憶を含むPTSD症状への影響は不明だったことから、今回の研究ではPTSDモデルマウスを用いた実験を行うことにしたとする。

マウスでPTSDをモデル化するため、「二重トラウマPTSDパラダイム」が用いられた。トラウマ記憶の負荷と記憶確認実験は、白箱と黒箱が連結した仕組みを使用。マウスに黒箱でショックを与えると、その記憶があるうちは黒箱を回避して侵入しなくなる。それを利用し、マウスを白箱に入れてから黒箱に侵入するまでの時間を用いて記憶の評価が行われた。

そして、成体マウスに二度の強いショックを異なる状況下で与えると、恐怖記憶消去の障害・不安の増大・「汎化」(トラウマ経験とは異なる状況、または類似の状況においても、トラウマに関連する恐怖反応が生じること)など、PTSD患者で観察される症状に似た一連の行動が出現することが確認された。

次に、海馬の神経新生を増加させることが報告されている「自発運動」を促すため、マウスのホームケージにランニングホイールが設置された。ショックが与えられた後、4週間の自発運動によりトラウマ記憶が減弱し、PTSD様症状も減弱することがわかったという。しかし、自発運動には神経新生増加以外の生理的な作用もある。そこで、PTSD様症状の減弱が神経新生による効果なのかどうかを調べるため、遺伝学的手法を用いて新生神経だけへのアプローチが行われた。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください