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京大など、数十年確認できなかった「らせん型超伝導」の証拠を遂に発見

マイナビニュース / 2024年5月14日 16時51分

画像提供:マイナビニュース

京都大学(京大)と科学技術振興機構(JST)の両者は5月13日、3種類の希土類化合物を積層構造させた「三色人工超格子」において、提案されてから長らく確認されていなかった「らせん型超伝導」状態が実現している証拠を発見したと共同で発表した。

同成果は、京大大学院 理学研究科の浅場智也特定准教授、同・成塚政裕大学院生(研究当時)、同・淺枝寛人大学院生(研究当時)、同・小菅優揮大学院生(研究当時)、同・池森駿大学院生、同・末次祥大助教、同・笠原裕一准教授(現・九州大学教授)、同・幸坂祐生教授、同・寺嶋孝仁教授、同・大同暁人助教、同・柳瀬陽一教授、同・松田祐司教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

BCS理論では、反発する2つの電子に引力が働き電子対の「クーパーペア」が形成されることで、超伝導が実現されると説明されている。同様に、同ペアの形成は、通常は逆向きのスピンおよび運動量を持つ2つの電子の間で起こるとされている。しかし、すべての超伝導体がBCS理論に完全に従うわけではない。たとえば、銅酸化物高温超伝導体は超伝導電子対が有限の角運動量を持っていることが知られている。また、ある種のウラン化合物では、同じ向きのスピン同士で電子対形成が起こる「スピン三重項超伝導体」が実現されている。

そして、らせん型超伝導もそうしたBCS理論に当てはまらない1つで、電子対の「重心運動量」がゼロではないという特徴を持つ。ただし、実現されたとする確証が得られておらず、検証が長年待ち望まれていた。課題は、同超伝導の実現には強い「スピン軌道相互作用」(電子のスピンと電子の動き(軌道角運動量)との相互作用のこと)と、「空間反転対称性」の破れ、そして高い「超伝導上部臨界磁場」を必要とするなど、非常に厳しい条件が必要とされる点。さらに、実現したとしても、超伝導電子対の重心運動量の直接測定が困難という検証方法の問題もあり、実現の決定的な証拠が得られていなかったという。

上述の3条件のうち、強いスピン軌道相互作用と高い上部臨界磁場を持つことから、らせん型超伝導の実現の可能性がある化合物として注目されてきたのが、セリウム・コバルト・インジウムの希土類化合物超伝導体「CeCoIn5」(以下、(1)と省略)。しかし(1)は結晶の対称性が高く、「ラシュバ軌道相互作用」(空間反転対称性が一軸方向に破れている際に生じる、スピン軌道相互作用を起源とする相互作用)を持たないことが最大の難点だったという。

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