北大、幅広く応用可能な性質の揃ったナノ粒子を簡便に作成する方法を開発
マイナビニュース / 2024年5月27日 20時59分
北海道大学(北大)は5月24日、酵素の加水分解作用を制御することで、性質とサイズ(約10~1000nm)の揃ったナノ材料「メゾスコピック粒子」を簡便に作成する新規手法「生体触媒ナノ粒子成形(BNS)法」を開発したことを発表した。
同成果は、北大 電子科学研究所の高野勇太准教授(同・大学大学院 環境科学院兼任)、同・ヴァスデヴァン・ビジュ教授、同・大学大学院 環境科学院のルマナ・アクター大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行するナノサイエンスとナノテクノロジーに関する全般を扱う学術誌「Nanoscale Horizons」に掲載された。
メゾスコピック粒子は原子よりは大きいが、一般的な物質よりは遥かに小さい、特定の大きさの範囲にある粒子や集合体のことを指す。具体的なそのサイズは、10~1000nmほどだ。同粒子はその特殊なサイズのため、今までの材料とは異なり、粒子の大きさによって光や熱、電気の伝導性、化学反応の速度などが変わるなど、ユニークな性質を有していることがあるという。医療応用においても、同粒子は血中滞留性が良いことが知られており、効果的な薬の開発基盤技術として注目されている。
しかし、従来のメゾスコピック粒子作成法は、高い技術力が必要な精密ポリマー合成やリソグラフィ法、あるいは均質な粒子サイズの制御が難しい物理破砕法(ボールミリング法など)が主流だった。そこで研究チームは今回、粒子サイズの揃った同粒子を簡便に作成する方法として、有機分子から無機材料まで多種多様な物質を原料として利用可能なことから、酵素の分解作用を活用した手法を開発することにしたという。
まず、量子ドットまたは有機分子同士をコア部分とし、酵素での分解が可能なペプチド「オリゴリシン」を連結部位として連結させたマイクロメートルサイズの構造体が作製された。この構造体は溶液にほとんど溶けずに沈んでしまうが、ここに酵素を加えることで連結部位が分解され、小さな粒子になるのである。
一般的に、酵素分解反応は分解可能な部位がなくなるまで終わらないので、研究チームでは当初、構造体が極めて小さくなることを予想していたとする。しかし、連結部位の酵素分解反応が途中で止まり、粒子サイズの揃ったメゾスコピック粒子が得られたという。これは、コア部分の量子ドットまたは有機分子が酵素による分解作用を物理的に阻害し、反応が途中で止まってしまうためと推測された。
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