気鋭監督アンシュル・チョウハン、日本映画界に感じる“自由” 映像制作集団「g」で新作プロジェクトも
マイナビニュース / 2024年5月29日 6時0分
ただ、日本の映画界には良いところがあります。それは、誰がどんな映画を作っても公開できることです。インドでは政府が気に入らなければ公開できないこともあれば、映画祭でも作品を取り下げられることが起こってしまう。それと比べて、日本は自由さがあります。もちろん、映画を公開することは簡単なことではありません。日本は安くて本当に良いものを作らなければならないとても厳しい市場です。濱口竜介監督のインタビュー記事を読んだ時に驚きました。映画を100万ドル以下で作っていて、チームメンバーは10人しかいなかったそうで、それなのにアカデミー賞を受賞しているのですからね。他の国ではあり得ないことです」
映画界の現状を冷静に見つめながら、さらなるチャレンジに挑む準備を進めている。具体的に動き出したプロジェクトもあり、LGBTをテーマにしたものや、沖縄と台湾を舞台にしたものなど3つほど企画を抱え、今は一緒に参加してくれるパートナーを探しているところだという。
「これまで以上に大きなプロジェクトに取り組むことが目標です。大きいといっても、単に予算が大きいという意味ではなく、大きなビジョンを持って、妥協せずに取り組むことを大事にしたい。安藤サクラのようなご一緒したい俳優も何人かいます。日本で仕事を続けながら、インドでやりたい仕事もあるし、アメリカでの仕事もある。映画監督として、いろいろなストーリーをバッグに忍ばせておこうと思っています」
●アンシュル・チョウハンインド出身。陸軍士官学校で訓練を受け、大学にて文学士を取得した後、 アニメーターとして2006年からパプリカスタジオ(現:テクニカラー・インド)で働き始め、ニコロデオンの 『Farm Kids』 や 『Back at the Barnyard』、国際的な受賞歴もある『Delhi Safari』などのプロジェクトに携わる。また、BBCテレビ『Everything's Rosie』では、チームリードを務めた。2011年に東京へ拠点を移し、ポリゴン・ピクチャーズでは、エミー賞を獲得したディズニーXD『トロン:ライジング』や『超ロボット生命体トランスフォーマープライム』などに携わる。その後、オー・エル・エムでバンダイナムコ『パックワールド』の制作に関わり、スクウェア・エニックスへ移ると、ファイナルファンタジーXV』や『キングズグレイブ: ファイナルファンタジーXV』、『キングダムハーツ3』そして『ガンツ:オー』、『ファイナルファンタジーVII リメイク』など、多岐主要プロジェクトに関わる。アニメーターとして日本で働く傍ら、自主制作への情熱も芽生え、2016年にKowatanda Films (コワタンダ・フィルムズ)として活動を始め、これまでに短編映画3作と長編映画2作を完成させる。中でも長編2作目となった『コントラ』は、国際的な認知度が高く、ジャパン・カッツの大林賞受賞を含め、世界各国の映画祭で様々な受賞を遂げている。
長谷川朋子 はせがわともこ テレビ業界ジャーナリスト。2003年からテレビ、ラジオの放送業界誌記者。仏カンヌのテレビ見本市・MIP現地取材歴約15年。番組コンテンツの海外流通ビジネス事情を得意分野に多数媒体で執筆中。著書に『Netflix戦略と流儀』(中公新書ラクレ)。 この著者の記事一覧はこちら
(長谷川朋子)
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