なぜ現在の宇宙は単純な姿で観測されるのか?、東大などが理由の一端を解明
マイナビニュース / 2024年5月31日 15時52分
相対性理論では光よりも早く情報が伝わることを禁止し、量子的な揺らぎは宇宙の進化を場所ごとに揺さぶることから、ある点と遠くはなれた別の点では、インフレーションの終わるタイミングが揃わなくなるということが導かれており、例えば日本の国土がインフレーションにさらされた場合を考えた場合、揺らぎの影響で、都道府県ごとに拡大の割合が異なったものになることから、北海道が最も小さくなり、沖縄県が最も広いといったことも起こり得る。この時、面積拡大のために沖縄県の生態密度(面積あたりの生物の個体数)は極めて小さくなり、もともとあった生態系の多様性が失われていることが想像される。これは、土地面積が拡大すればするほど、多様性が失われ、単純になってゆくことを意味し、こうした考えを踏まえ、研究チームは今回、「最も膨張して、宇宙の中で最大の体積を占める領域」における場の振る舞いを、確率的な手法を用いて解析することにしたという。ここでの確率的というのは、インフレーション中の場は揺らぎにさらされており、揺れ動いているためだという。
解析の結果、たとえ宇宙が「複数場」の状態から始まったとしても、長時間のインフレーションの過程でほとんどの場が消失し、我々が観測している局所的な宇宙に至る頃には「単一場」の状態、つまり、極めて単純な姿に行き着くことが示されたという。これは、インフレーションが短時間しか起こらなかった場合に比べ、揺らぎが場を「回り道」をさせて、インフレーションの期間が延長されることによって、時間を稼ぐ上で有利な場だけが生き残るためだという。
今回の研究成果について研究チームでは、理論と観測との隔たりが、揺らぎを鍵として解消されることを意味するものだと説明しているほか、将来的な観測が宇宙の複雑な姿の痕跡、つまり「複数場」の状況に限って現れる揺らぎの特徴を捉えたならば、インフレーションの理論モデルを同定する大きな手掛かりを与えるものでもあるともしており、理由として観測可能な領域においても単一場に向かうことのない例外的な理論モデルが必要とされるためとしている。
(波留久泉)
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