衛星を運ぶ仕事を実感。指令室から射点まで - 種子島宇宙センターレポート
マイナビニュース / 2024年6月4日 7時2分
続いてツアーは、大型液体ロケットを打ち上げる吉信地区へと移動した。海に向かって張り出した突端に、吉信大型ロケット第1・第2射点(LP1・LP2)がある。VABから約500mの距離にあるLP2はもともとH-IIB用だった射点で、現在はH3用となっている。射点の目印にもなっている、赤と白に塗り分けられた2棟の避雷鉄塔に挟まれた場所に、深さ20m以上の煙道が海に向かって開けている。H3ロケットを載せたドーリーは、埋設された目印になるマグネットをトラッキングしながらVABからしずしずとやってきて、煙道の真上に踏ん張るように位置するのだ。
煙道の左右の白い屋根の下には縦穴があいており、煙道と地下でつながっている。これは3000ケルビン(約2700℃)にもなるLE-9エンジンからの噴煙の温度を下げるため、空気を取り込むためのものだ。また煙道には放水用の配管が取り付けられていて、水をまいて温度を下げる。それでようやく3000ケルビンから1000ケルビン(700℃強)になる程度だという。打ち上げのたびに高温の噴煙でLP2の施設は損傷するため、毎回の補修が必要だ。熱の影響をできるだけ低減してライフサイクルコストを下げることがロケットの運用性を高めるために必要なのだという。
LP2の外側の海沿いをフェンスが取り巻いているが、これは打ち上げのたびに毎回取り外さなくてはならない。煙道から出てきたばかりの噴煙をまともに浴びると壊れてしまうためだ。海側のフェンスはわざと倒して設置され、噴射で壊れないように、また鼠返しのように海側からの侵入を防ぐようになっている。これも、年間6回以上のH3打ち上げを実現するために欠かせない、大事な射場設備である。
この超高温の噴煙を生み出すのが、極低温の液体水素と液体酸素だ。どちらも気化しやすいため、推進剤の充填には液体窒素を使った配管の予冷が必要だ。それでも推進剤の最初の分は燃料として使用するには温まりすぎているため、少し離れた場所に設けられた池に放出して焼却処理される。極低温の推進剤をタンクに十分に充填するのはそれだけで大変な作業だが、夏のほうが大変で冬はある程度は充填しやすくなるのかというと、意外にそうでもないのだという。極低温の燃料にくらべれば、夏冬の気温差も充填時間に大きな影響を与えるほどの違いではないのだとか。
●種子島に残された数々の“ロケット遺産”
○射点から遠くなって運用性が向上した「SFA3」
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