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衛星を運ぶ仕事を実感。指令室から射点まで - 種子島宇宙センターレポート

マイナビニュース / 2024年6月4日 7時2分

吉信地区から少し離れた場所にある第3衛星フェアリング組立棟(SFA3)は、その名の通り3番目の衛星組立棟で、H3の開発に合わせて新設された。これまでのSFA・SFA2が射点から3km圏内にあるため、ロケット発射後から警戒態勢が解除されるまで、SFAで作業していた人たちが外に出ることができないという制限があった。SFA3は警戒区域の外側にあるため、発射後に時間制限なく移動できるようになった。またこれまでは機材搬入の際に住宅が密集する市街地を通る必要があったが、SFA3の新設に伴って搬入路も整備されたという。

SFA3で6月末の打ち上げを待っているのが、ALOS-4だ。今は5枚の白いアンテナのパネルを折りたたんだ姿だが、打ち上げ後は太陽電池パネルの後ろにこのアンテナを展開するという最初の大事な仕事が待っている。有川プロジェクトマネージャによれば、畳んだアンテナの外側に突き出している突起は機体公開で大きな関心を呼んでいるのだという。確かに、パネルの上で目を引く様子だが、これは5枚のパネルを畳んだ状態で固定しているボルトの容器だ。アンテナの展開とともにボルトは外れるが、軌道上に自由に漂い出てしまうのは困る。そこで紙コップを伏せたようなキャッチャーで受け止め、そのままALOS-4とともにミッションのお供となるのだ。

○ロケット遺産で知る、年経た宇宙機の姿

LCC、RCCからLP2、SFA3と、H3ロケットとALOS-4の今に関わる施設を巡った後で、最後に種子島宇宙センターのロケット展示施設「ロケットガレージ」を紹介しよう。

ロケットガレージには、1999年にH-IIロケット8号機の打ち上げ失敗を受けて運用を終了したH-IIロケット7号機の実物の機体が展示されている。1段、2段の機体を奥までのぞいて見ることができる貴重なもので、2008年には国立科学博物館「未来技術遺産」に指定された。

H-II 7号機の機体は、製造から25年近くが経過している。外側に塗布された断熱塗料は、元のベージュからオレンジ、焦げ茶色へと変色してきている。この色だが、何かに似ていないだろうか? 先月、軌道上サービス企業のアストロスケールが軌道上で撮影した、H-IIAロケット15号機上段の外観画像だ。2009年からほぼ15年間、軌道上で強い紫外線にさらされたH-IIA上段は茶色く“日焼け”していた。H-II 7号機の機体は屋内に置かれていて、軌道上ほど強い紫外線に直接さらされているわけではないが、日焼けの具合はかなりよく似ている。アストロスケールの撮像に際して、経年変化を推定する手がかりとして材料の紫外線暴露実験も行われているが、種子島でH-IIの機体に親しんできた人にとって、あの色はまさに見慣れた“年経た宇宙機”の色そのものなのかもしれない。

ロケット開発の歴史と今をつなぎ、これからの宇宙活動に思いを馳せることができる種子島宇宙センターのツアーは、春の特別公開の際にも行われている。2024年は荒天のため中止となってしまったが、これからの機会をぜひ活かしてほしい。

秋山文野 あきやまあやの フリーランスライター/翻訳者(宇宙開発) 1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経て宇宙開発中心のフリーランスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。 この著者の記事一覧はこちら
(秋山文野)



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