天の川を高速で通過した暗黒物質サブハローの痕跡、慶大などが発見
マイナビニュース / 2024年6月4日 18時36分
慶應義塾大学(慶大)と国立天文台(NAOJ)は6月3日、たて座の方向、約1万3000光年の距離にある特異分子雲を詳細に調べた結果、天の川銀河を取り囲むハロー部から降ってきた何らかの天体が円盤部を高速で通過したこと、また、円盤部下方で確認された「フィラメント」の先端に明るい天体が存在しないことから、その降ってきた天体は矮小銀河や球状星団になり損ねた「ダークマター(暗黒物質)サブハロー」である可能性が高いと発表した。
同成果は、慶大大学院 理工学研究科の横塚弘樹大学院生(研究当時)、同・大学 理工学部 物理学科の岡朋治教授、同・大学大学院 理工学研究科の辻本志保大学院生(研究当時)、同・渡邉裕人大学院生(研究当時)らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
直径約10万光年の天の川銀河の円盤部の外側には、同銀河に属する直径約30万光年の球状領域「ハロー」が広がっている。同領域には、天の川銀河に属する約150個の球状星団や50個以上の小型の衛星銀河などのハロー天体、多数の希薄な水素原子雲に加え、ダークマターも広がっているとされる。
また、ハロー部のダークマターは一様ではなく、各種ハロー天体を取り囲むように高密度な領域であるダークマターサブハローが存在していると考えられている。しかし、ハロー部で観測される矮小銀河の数が、理論的に予測されるダークマターサブハローの数に比べて圧倒的に少ないため、「ミッシング・サテライト問題」として研究者を悩ませているという。
研究チームは、過去に国立天文台 野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡により行われた「一酸化炭素(CO)回転スペクトル線」による天の川広域観測「FUGINサーベイ」のデータを使用した「広速度幅構造」探査の過程において、1つの特異な分子雲「CO 16.134-0.553」を発見。同分子雲は、地球から見てたて座の方向、約1万3000光年の距離にあり、明瞭な対応天体が付随しないにも関わらず、約40km s-1という異常な速度幅を持っていることが謎とされていたという。この速度幅は、通常の静穏環境にある分子雲の典型的な速度幅(1~5km s-1)と比較して異常な値であり、未知の天体が同分子雲へのエネルギー供給に関与した可能性が指摘されていたためで、そうした背景を踏まえ、研究チームは今回、野辺山45m電波望遠鏡を用いて、特異分子雲の詳細な追観測を実行することにしたとする。
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