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九大、後の出来事が直前の出来事に錯覚を起こさせる脳の仕組みの一端を解明

マイナビニュース / 2024年6月5日 15時0分

画像提供:マイナビニュース

九州大学(九大)は6月4日、ヒトの脳において、過去の出来事から未来を予測するだけでなく、時間的に後の出来事が直前の出来事の知覚・解釈に影響を与える「ポストディクション」が、対象の位置の知覚において強固に機能することを確認したと発表した。

同成果は、九大大学院 芸術工学府のシェリル・デヘス大学院生、同・大学大学院 芸術工学研究院の伊藤裕之主幹教授、同・兼松圭助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、知覚研究に関する全般を扱う学術誌「i-Perception」に掲載された。

「saltation(跳躍)錯視(VSI)」は、ヒトが見たと感じたもの(視覚情報)が、必ずしも現実を真に反映したものではないことを明確に示す現象として知られている。特に、網膜に何も映っていない部分の視野に視覚的な対象が出現して見える現象であることから、脳によって構成される視覚体験を研究するために最適な錯視の1つであると考えられているという。

そのVSIは、どのような錯視なのかというと、光刺激(光の点灯)が条件によっては、実際の光刺激が行われた位置や順番ではなく、都合のいいように脳が解釈してしまうという内容で、例えば周辺視において素速く3回の光刺激を行うとして、1番目と2番目は同じ位置で続けて行い、3番目を異なる位置で光刺激を行うと、なぜか2番目がホップして、1番目と3番目の中間位置に知覚されてしまうというものである。

この現象は、もともとは触覚において発見された歴史がある。前腕の3つの位置に分けて複数回皮膚を刺激すると、皮膚上を均等な間隔で順にタッピングされたように感じるという実験結果が1970年代前半に報告され、この現象はウサギが皮膚上をホッピングしているという比喩から、「皮膚ウサギ効果」(CRE)と命名された。VSIは、このCREを簡略化した視覚版の錯覚である。

VSIにおいて、2番目の光刺激が元の位置からホップして、1番目と3番目の光刺激の間の位置に知覚されるということは、脳は3番目の光刺激を知覚した後に、2番目の位置を知覚していることを意味し、それは現実とは異なる順番で知覚しているということを示すという。その理由は、脳における予測や、動きの方向に対する位置ずれなどが考えられており、2000年代に入ってからは、ポストディクションの概念も仮説に加えられてきたとする。

そうしたことを踏まえて研究チームは今回、従来の実験のように、1番目の光刺激と同じ位置に2番目の光刺激を提示するだけでなく、さまざまな位置に提示することで、どのように知覚されるのかを調べることにしたとする。

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