東工大など、低次元超伝導体「グラフェン-カルシウム化合物」の新事実を発見
マイナビニュース / 2024年6月6日 14時6分
東京工業大学(東工大)と分子科学研究所(分子研)の両者は6月5日、低次元超伝導体「グラフェン-カルシウム化合物」の原子構造を調べることで、支持基板である炭化ケイ素(SiC)との界面でカルシウム金属層が形成されることを発見したと発表した。
同成果は、東工大 理学院 物理学系の一ノ倉聖助教、同・德田啓大学院生(研究当時)、同・平原徹教授、同・豊田雅之助教(研究当時)、同・斎藤晋名誉教授、分子研の田中清尚准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するナノサイエンス/テクノロジーに関する全般を扱う学術誌「ACS Nano」に掲載された。
量子コンピュータを実現するための方式は複数ある中、最も研究開発が進んでいるのが超伝導方式で、すでに実用化されている。ただし現在はまだ小規模なレベルに留まっており、今後はその性能を、量子コンピュータとして求められているレベルに到達させるため、大規模化を実現すべく集積化が進められていくことになる。将来的には、ナノスケールの超伝導体を用いた素子が実用化されていくとも予想されている。
素子の微細化への要請に対し、電子材料分野で注目されているのが低次元物質だ。同物質の中で最も単純な構造を持ち、化学的に安定なのが、炭素原子が1層の厚みで蜂の巣格子状に結合した2次元物質のグラフェンである。柔軟性、光学的透明性、電子移動度に優れた同物質を母材として適切な化合物を合成することで、柔軟性や透明性を有する優れた2次元超伝導体を作り出すことができると考えられるという。
そうした考えのもと、2016年に東京大学(東大)と東北大学の共同研究チームが開発したのが、グラフェンとカルシウムの合成による2層グラフェンの超伝導体だ。その当時は合成方法として、リチウムからカルシウムへの置き換えを行う「元素置換法」が取られていたとのこと。東工大と東大の共同チームが、その元素置換の過程を調べたところ、最終的な組成ではカルシウムが支配的になることが示唆されていた。ただしこの時、不純物としてリチウムが残留している可能性を排除できず、原子構造と超伝導特性の関係性を正確に解明することができずにいたという。そこで研究チームは今回、新たに純粋なグラフェン-カルシウム化合物を合成する手法を開発し、またその化合物を詳細に調べたとする。
今回の研究では、真空中において高い流量のカルシウム蒸気を2層グラフェンに吹き付けることで化合物を合成。さらに、合成過程を光電子分光法より解明することに成功したとする。その結果、カルシウムが高密度になると、2層グラフェンの間だけでなく、支持基板であるSiCとの界面にもカルシウムが侵入することが確認されたとした。
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