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理研、電子ビームの電子回折をアト秒で制御できる技術を開発

マイナビニュース / 2024年6月6日 21時34分

画像提供:マイナビニュース

理化学研究所(理研)は6月5日、アト秒(as)電子ビームを用いた実験により、電子回折過程を光(レーザー)によってアト秒レベルで変調できることを発見したと発表した。

同成果は、理研 開拓研究本部 森本超短パルス電子線科学理研白眉研究チームの森本裕也 理研白眉研究チームリーダー(理研 光量子工学研究センター 超短パルス電子線科学理研白眉研究チーム 理研白眉研究チームリーダー)らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

原子1個を識別して観測するには、それよりも波長を短くする必要があり、それを可能としたのが、波長が原子の100分の1ほどしかない電子ビームを用いる電子顕微鏡である。そして、アト秒という極めて短時間の間に起きる物理現象を電子顕微鏡で観測するためには、アト秒の間だけ試料をフラッシュのように照らすアト秒電子ビームが必要とされていた。

電子顕微鏡の測定手法の1つである「電子回折」は、物質の構造決定によく用いられる。しかしアト秒電子ビームでの電子回折では、どのような信号が観測されるのかはよくわかっていないという。これは、同ビームを発生させること自体がまだ難しい上に、それを用いた回折実験も困難を伴うからだという。そうした中、2018年に同ビームの直接観測に成功していた研究チームは今回、同ビームを用いた電子回折実験を実施し、その詳細を調べることにしたという。

アト秒電子ビームの発生は、レーザー光によって電子ビームを加減速することで行われる。今回の研究では、試料であるケイ素単結晶薄膜の透過電子回折像の取得を行った後、同薄膜にレーザー光を照射したところ、アト秒電子ビームとレーザー光の相対的な遅延時間(時間差)に応じて、回折強度が超高速(3400asの周期)で変化することが確認されたという。

この理由を詳しく調べたところ、回折の発生条件である「ブラッグの法則」(ラウエの条件)に由来していることが判明。電子回折は、電子ビームと結晶の間の角度が同法則を満たすと効率よく起こる(満たさない場合は効率は悪くなる)。結晶学においては、同法則を利用し、ビームに対して結晶を回転させた際の回折強度の変化を測定することで、結晶の性質を評価する「ロッキング・カーブ測定」が行われるが、今回の研究では、結晶を回転させていなかったものの、アト秒電子ビームがレーザー光の影響で振動運動を行ったため、類似した効果が発生したという。

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