ブリヂストン、月面タイヤへの過酷なる挑戦 - 「空気とゴムに甘えていた」
マイナビニュース / 2024年6月10日 6時45分
走行路面、走行条件など前提条件をアップデートした第2世代タイヤ。砂地でスタックしない「走破性」については、ラクダの足からヒントを得たという。砂漠を難なく歩くラクダの足は細いが、その足裏は地面を踏むと広がって接地面積を増やしている。この足裏のざらざらした表面の摩擦で砂を掴む構造にヒントを得て、タイヤ表面に金属フェルトを採用し摩擦力を向上させたとのこと。
第1世代では基本の骨格にスプリング構造を採用していたが、開発が進み、月面環境や走行条件が明確になるにつれ、タイヤに要求される性能が一段と厳しさを増したという。そこで採用したのが、薄い金属スポーク構造。大きな荷重を支える高い耐久性を持ちながら、より軽量にしたほか、タイヤのトレッド部(月面と接する部分)を分割することで、しなやかに変形し接地面積が大きくなりタイヤが砂に沈みにくく走破性が向上したという。
第1世代の課題が第2世代でどう解決されたのかについて弓井氏は、「走破性を高めるにはなるべくタイヤを変形させたい。でも変形させると構造体によりストレスがかかる。変形させるところと耐久性をもたせるところを分けて設計することが(第1世代では)難しかった。第2世代では別々に設計できていて、変形させるが局所的なひずみに留め、高い耐久性を実現できた」と説明。しなやかに変形させつつ、耐久性をもつタイヤがこうして生まれたのだ。
果たしてこのタイヤが月面で約1万㎞走行できるのか。重要になるのが、走行実験だ。
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鳥取砂丘にある月面「ルナテラス」
タイヤを設計する際は、板バネの形状はこれでいいか、厚みはどのくらいにするかなど、シミュレーションによる最適化設計を行うとと共に、リアルな環境で走行してみてその妥当性を検証する必要がある。
走行実験が行われているのは鳥取砂丘にある月面実証フィールド「ルナテラス」。平井伸治鳥取県知事によると、鳥取砂丘は10万年の歴史があり、千代川が上流から花崗岩を砕いて海に運び、日本海の荒波に削られ、とても細かい砂になったのだという。砂粒の大きさなど月面の砂レゴリスと類似性があることから、鳥取県は2023年7月7日、鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラス」をオープン。鳥取県と連携することなどの条件はあるが、利用料は無料で、これまでにブリヂストンはじめさまざまな企業や大学などが利用している。
いよいよ走行実験開始!
今回、初公開された走行試験は2種類で、「走行性能試験」と「耐久性能試験」だった。
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