東工大、磁束集中器を用いない高感度「ダイヤモンド量子センサ」を開発
マイナビニュース / 2024年6月7日 20時53分
東京工業大学(東工大)は6月6日、ダイヤモンド中の「窒素-空孔中心」(NVセンタ)を利用した「ダイヤモンド量子センサ」で、低周波磁場に対し、磁束集中器を用いないダイヤモンド量子センサ単体の感度としては、低周波領域で最も高い値となる9.4ピコテスラ(pT)/√Hzを達成したと発表した。
同成果は、東工大 工学院 電気電子系の関口直太特任准教授、同・岩﨑孝之准教授、同・波多野睦子教授、東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻の伏見幹史特任助教、同・関野正樹教授、物質・材料研究機構 電子・光機能材料研究センター 半導体欠陥制御グループの寺地徳之グループリーダー、量子科学技術研究開発機構 高崎量子技術基盤研究所 量子機能創製研究センターの大島武センター長ら、文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププロジェクト(Q-LEAP)によるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する応用物理学全般を扱う学術誌「Physical Review Applied」に掲載された。
脳の神経活動を電気的に捉える脳波計測に対し、磁気的に捉える脳磁計測は、その位置や時間をより高精度に推定することが可能であることから、脳磁計測は医療診断や脳機能の理解に非常に有用な技術であり、近年、量子センサを用いた新たな手法の研究開発が進んでいる。
現状の脳磁計測装置は、大型で高価な磁気シールドルームや冷却装置などが必要なため、それらを必要としない一般的な環境下で利用できる装置の開発が目標とされる。その結果として、日常的な検診や脳機能のより詳しい研究や、ブレイン・マシン・インタフェースの研究などへ大きく貢献できると期待されている。
ダイヤモンド中のNVセンタを利用したダイヤモンド量子センサは磁力計として、地磁気や電子機器からの磁場下などにおいても、常温で微小な磁場変化を測定することが可能だ。それにより、磁気シールドや冷却装置の必要ない脳磁計測を実現するための高感度な磁力計として利用できるとされる。
しかし脳磁は、頭皮表面付近でも数pTと極めて微弱な上、その発生源である神経からの距離の2乗に反比例して強さが減衰する。そのためセンサには、非常に高い磁場感度の他にも、頭に近づけられる設計や、長時間にわたる安定した動作が要求される。また、脳磁の周波数は、周辺環境や機器によるノイズが大きく計測が難しい100Hz以下の低周波領域である。これらの厳しい条件を満たすダイヤモンド量子センサはまだ報告されておらず、脳磁計測のためには高性能化が求められていた。そこで研究チームは今回、測定対象に容易に近づけられる設計のダイヤモンド量子センサの開発を試みることにしたという。
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