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京大など、RNAを用いたAND演算が可能な液滴コンピュータの開発に成功

マイナビニュース / 2024年6月10日 19時14分

画像提供:マイナビニュース

東京工業大学(東工大)、京都大学(京大)、東北大学、理化学研究所(理研)の4者は6月7日、がんのバイオマーカーである特定の「マイクロRNA」(miRNA)を選択的に認識し、「AND演算」の結果を出力できる「RNA液滴コンピュータ」の開発に成功したと共同で発表した。

同成果は、東工大 情報理工学院 情報工学系の瀧ノ上正浩教授、同・鵜殿寛岳博士研究員(学術振興会特別研究員)、同・范敏之大学院生(研究当時)、同・齊藤洋子技術員(研究当時)、京大 iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門の齊藤博英教授、同・大野博久助教、東北大大学院 工学研究科 ロボティクス専攻の野村M.慎一郎准教授、理研 生命機能科学研究センターの清水義宏チームリーダーらの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するナノサイエンス/テクノロジーに関する全般を扱う学術誌「ACSNano」に掲載された。

DNAやRNAからなる直径数nmのナノ構造体(モチーフ)は、自発的に集合し高い流動性を持つ直径数μmの液滴(マイクロ構造体)を形成することが可能だ。モチーフはXやYなどのような形状で分岐構造を持ち、末端同士で相互作用する。また、塩基対形成ルールに従ってモチーフ同士の相互作用を自在にプログラムでき、それにより液滴同士を自在に融合・分離させることも可能だ。

近年、DNAでのAND演算を実行する液滴が報告されていたが、一方のRNAは機能性を持たない液滴の形成が報告されているのみだった。RNAはDNAと比べると機能も構造もはるかに多様で、DNAよりも複雑な相互作用をすることから、それらを活かした多様な機能・構造を発現するRNA液滴の実現は、プログラマブルで高機能な液-液相分離液滴の発展に不可欠な一歩だという。そこで研究チームは今回、「特定のmiRNAが2種類入力された時だけRNA液滴が溶解する」という挙動の実現を目指したとする。

モチーフ間の相互作用としては、遺伝子発現制御などに関わる、末端にヘアピン状のループ構造を持つRNA同士が結合する「キッシング・ループ(KL)相互作用」がRNA液滴の形成原理とされた。

AND演算RNAモチーフは、KLを含むXs1~Xs4の配列の他に、サイドに2つの突起構造STH1とSTH2を持つ。先端に2種類のmiRNA(“m1”と“m2”)の同色部分と結合する配列がある。たとえばm1が入力された場合、赤の部分はSTH1の赤色の配列と結合する。これを足がかりとして、m1の緑の部分はSTH1の緑の配列と結合し、もともとSTH1と結合していたXs4の緑の配列は切り離される。この鎖置換反応がSTH2でも起こる結果、モチーフは2つに分離する。初期構造はネットワーク状の構造だが、分離後は鎖状の構造へと変化する。初期構造は水に溶けにくく液滴として存在可能だが、鎖状構造は水に溶けやすいため、m1およびm2が入力された時だけ液滴は溶解する仕組みだ。

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