プロ将棋の残酷さとそこから生まれたドラマ、中座八段の「伝説の写真」~事実は小説より奇なり
マイナビニュース / 2024年6月21日 18時10分
いよいよ最終局。残る1枠を争うのは5敗の中座、野月、藤内に、6敗の木村の4人。最終戦を前に野月は何度も星取り表を確認していた。藤内は星取り表をにらむとひとつ大きくため息をついて対局室に向かった。中座はその後、1度も現れなかった。
5時過ぎ、次々に勝敗が決まっていく。木村敗れるの一報。ほどなく野月も中座も敗れた、という知らせが入る。藤内も打ち取られた。4人が4人とも勝てなかった…。
廊下にいた中座に連盟職員が「上がったよ」。
「エッ」と叫んだ中座は次の瞬間、頭を壁で支えていた。そして5、6歩歩くとうずくまってしまった。15年目でつかんだ棋士の座だった。手続きする中座の目には涙があふれていた。
○中座新四段のコメント
今回が最後ということで、かえって開き直れました。
他の人の星は見ませんでしたし、知りませんでした。
昇級を知らされたときは信じられませんでした。
15年は長かった。今はただうれしいだけで、頭がボーッとしてて抱負とか目標とかも思い浮かびませんが、1局でも良い将棋を指せたらと思います。
(週刊将棋1996年3月13日号 第18回奨励会三段リーグ戦最終日)
中座三段(当時)は自身が対局に負けてしまい、夢破れるかと思われたところで、ライバルたちが星を落としたことで奇跡的に昇段を果たしました。将棋に人生を賭け、そして思い敗れる覚悟を決めた26歳の青年の運命が一転した瞬間でした。その思いの強さゆえだったのでしょう、彼は立っていることすらままならず、その場にへたりこんでしまったのでした。
そして、公式戦最後の対局の相手が、28年前のこの日に星を落としたライバル、野月浩貴八段であったこと、野月八段がこの対局で用いた作戦が「中座飛車」であったことも、また運命としか言いようがありません。
中座八段に起きたドラマはこれからも語り継がれていくことでしょう。
(将棋情報局)
-
-
- 1
- 2
-
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
山崎八段 棋王戦本戦で弟弟子の澤田七段に敗れる 藤井棋聖に挑む7月1日の第3局を前に連勝ならず
スポニチアネックス / 2024年6月25日 20時52分
-
西山女流三冠がプロ棋士編入試験資格獲得へ「王手」 前王位の木村九段から大金星…来月4日阿部七段に挑む
スポーツ報知 / 2024年6月24日 5時0分
-
勝負師たちの系譜 棋士の引退(下)青野照市九段「こんな負け方で…」 中尾敏之六段、人生最大の大一番 華やかなタイトル戦の陰で行われる過酷な勝負
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月22日 15時0分
-
西田五段が二次予選進出 山崎流力戦術に風穴開ける ALSOK杯第74期王将戦一次予選決勝
マイナビニュース / 2024年6月14日 11時30分
-
将棋ファンだって語りたい!プロ棋士とファンが選ぶ、2023年度のベストバウトを発表!!【後編】
マイナビニュース / 2024年6月14日 11時30分
ランキング
-
1すき家、7月から“大人気商品”の復活が話題に 「この時期が来たか」「年中食いたい」
Sirabee / 2024年6月29日 4時0分
-
2「モノ屋敷の実家を片付け」嫌がる母と攻防の顛末 「絶対に捨てられない母」をどう説得したのか
東洋経済オンライン / 2024年6月29日 13時0分
-
3朝ドラ「虎に翼」後半戦がますます面白くなる根拠 「パイオニアとしての成功物語」からどう変わる?
東洋経済オンライン / 2024年6月29日 11時0分
-
4まもなく上場「タイミー」やって見えた本質的課題 ガチの隙間時間ではできず、微妙に使い勝手に難?
東洋経済オンライン / 2024年6月29日 12時0分
-
5「A-10を退役させろ」ついに年貢の納め時? スーパー攻撃機も「現代戦では使えない」を示したロシアのライバル機
乗りものニュース / 2024年6月29日 6時12分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)