早大、音楽ライブの観客間に強い一体感が生まれるメカニズムの一端を解明
マイナビニュース / 2024年6月21日 20時43分
早稲田大学(早大)は6月20日、ライブ会場などで、観客間で類似した感情が一斉に生じて強い一体感が生まれる「集合的感情」現象がよく見られるが、これまではそうした集合的感情の基盤に、同じライブなどを鑑賞する複数の観客の生理的状態が揃う、同期現象があると考えられてきたが、音楽への生理的応答の信頼性という観点から、そのメカニズムの一端を明らかにすることに成功したと発表した。
同成果は、早大 人間科学学術院の野村亮太准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
近年、テクノロジーの進展に伴い、劇場をはじめとする実際の環境において、ヒトの行動データを計測する研究が多くなされるようになっており、特に2020年代に入ってからは、世界各国で劇場でのフィールド・センシングによって得られたデータの解析研究が多く報告されているという。しかしその多くは、ミュージシャンなどのパフォーマンスを鑑賞する個人の心拍、皮膚電位、脳波といった生理指標の時系列データが同期したことを報告するに留まっているとする。そのため、観客同士に相関が生じ、客席での振る舞いが同期するメカニズムについては、まだ十分に解明されていない。
そこで研究チームは今回、物理学の一分野である「非線形力学系」(ある時刻での状態が、それ以前の時刻の状態に依存して複雑に決定されるシステム)の理論に基づき、劇場での観客同士は「共通入力同期」というメカニズムで同期することを理論的に予測し、それを実証実験で確かめることにしたとする。今回の研究では、個人を対象とする実験が行われ、劇場に存在する観客間の相互作用を排除することで、「音楽」という共通入力が、心拍を同期させる効果「music-induced heart rate synchronization」の大きさの解明が試みられた。
日常的には、自分を他人とは置き換えることはできないが、「コンシステンシー」の観点から見れば、「共通のパフォーマンスが初期状態(例:その日の気分や体調)によらず、観客の生理状態を同期させる」と見なせるという。この想定の下では、同一人物かどうかに関わらず、どの参加者も個体差の大小がある音楽知覚認知システムとして単純に記述することが可能。初期状態が異なるシステムに同一の複雑な入力信号を与えて経過を観察すると、最初のうちは(過渡状態では)出力が異なるが、その後、同一の出力が示されているようになる現象のことをいう。
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