NTT開発のアルゴリズム、スパコン「富岳」の大規模グラフ探索性能を約20%向上
マイナビニュース / 2024年6月25日 15時51分
理化学研究所(理研)のスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」は、スパコンの性能ランキングの1つである「Graph500」において9期連続で1位を獲得している。
この偉業達成の裏では、NTTが開発したアルゴリズム「Forest Pruning」が活用されているという。富岳は、2021年3月から供用が開始され、すでに3年以上が経過しているが、性能は引き続き向上していることになる。
Graph500は、大規模かつ複雑なデータ処理が求められるビッグデータ解析に関する指標であり、2024年5月に発表された最新のランキングでは、富岳全体の95.7%に当たる15万2064ノードを使用し、16万6029GTEPSを達成。前回の2023年11月のランキング時点から性能を約20%向上させている。
理研では、「BFS(幅優先探索)の結果に影響を与えずに不要な頂点を削除する前処理を新たに導入したことで、性能が向上している」とのコメントを発表していたが、ここにNTTの技術が活用されている。
グラフとは、頂点と枝によって、事物のネットワーク構造を示したデータであり、たとえば、鉄道の路線では、駅を頂点とし、線路を枝と定義し、グラフとして表現できるほか、道路網も交差点を頂点に、道を枝にすることで、グラフとして表現できる。NTTコンピュータ&データサイエンス研究所 主任研究員の新井淳也氏は、「知識もグラフとして表現でき、購買履歴や通信履歴、金融取引などを組み合わせたグラフによる表現も可能である。目的地まで最適な行き方を割り出したり、知識グラフを使って、AIが質問への回答を生成したり、サイバーセキュリティの不正検知なども応用されている。グラフはAIやセキュリティなど、さまざまな分野で利用される大事なデータである」という。
また、BFSは、グラフ処理における最も基礎的な要素技術で、与えられた始点に近い頂点から、順にグラフの全頂点を訪問するといった処理を行い、訪問経路を最短経路で示す「BFS木」として表現。BFS木をもとにした巨大なグラフに対応するには、スパコンと効率的なプログラムが必要になる。
富岳に実装したNTTの「Forest Pruning」は、同社が10年以上に渡り研究してきた高速グラフ処理技術をもとに開発したBFSアルゴリズムで、2023年3月に発表。2023年11月からは、富岳におけるGraph500の研究開発グループに参加し、実装を行ってきた。
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