富山大、睡眠中の脳で行われている推論の演算を神経細胞レベルで解明
マイナビニュース / 2024年6月26日 19時56分
富山大学は6月25日、マウスを用いた研究から、睡眠中でも脳は活動を続けて情報を処理し推移的推論の演算を行っていることを見出すと共に、その神経細胞レベルの仕組みを明らかにしたと発表した。
同成果は、富山大 学術研究部医学系 生化学講座の井ノ口馨教授/卓越教授(富山大 アイドリング脳科学研究センター センター長)らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。
睡眠中の脳活動は、記憶の定着に重要だ。しかし、より高次の脳機能に関しても睡眠中の脳活動が重要な働きをしているのか、仮にそうだとして睡眠中のどのような神経活動によってそうした高次の情報処理が為されているのかといったことは解明されていなかった。そこで研究チームは今回、マウスを用いる「推移的推論の学習課題」を開発して調べることにしたという。
今回の実験装置では、A>B>C>D>Eという階層性のあるA~Eの5つの部屋が用意された。各学習セッションでは、推移的推論の前提として2つの部屋だけが提示され、たとえばAとBの前提ペアの場合、マウスがたまたま部屋Aを選択して10秒以上留まると、報酬として砂糖水を受け取れるという仕組みだ。そして14日間にわたる学習の後に推論テストが実施され、その際にマウスが経験したことのない新しいペアの部屋BとDが用いられ(Bが正答)、どちらが選択されるのかが調べられた。
テスト1は最後の学習から30分後に、テスト2~4はその後の1日おきに行われた。マウスはテスト1では50%の正答率(チャンスレベル)しか示さなかったが、それ以降のテストでは80%以上の高い正答率(部屋Bを選択)を示し、正しく推論できていることが確認された。その一方で、テスト1の直後に睡眠をはく奪されたマウスでは、テスト2~4でもチャンスレベルの正答しか示せなかったという。
次に、正しい推論に睡眠中の大脳皮質の神経活動が必要かどうか、学習後の睡眠または覚醒期間中に大脳前帯状皮質の神経活動を抑制することで、その影響が調べられた。ノンレム/レム睡眠中の神経活動を抑制されたマウスでは、正しい推論ができなかったとする。その一方で、覚醒時の前帯状皮質の神経活動を抑制しても正しく推論できたという。また、A>Bなどの前提ペアに対する記憶は、抑制の影響を受けなかったとした。つまり、ノンレム/レム睡眠それぞれの脳活動は、過去の経験に基づいて実際には未経験なことを推論する能力に必要だが、覚醒時の脳活動は必要ないことがわかったのである。
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