九大、脳の複雑な神経ネットワークを7原色で標識する手法と識別AIを開発
マイナビニュース / 2024年6月27日 18時32分
九州大学(九大)は6月26日、ヒトの脳における複雑な神経細胞の配線を解析するため、神経細胞を7種類の蛍光タンパク質の組み合わせによって多色標識し、大半のヒトの目では識別不可能な4原色以上の世界も識別できるAIを用いて、神経回路のつながりを自動解析する手法を開発したと発表した。
同成果は、九大大学院 医学研究院の今井猛教授、同・マーカス・ルーウィ助教(研究当時)、同・藤本聡志助教、同・馬場俊和大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。
脳の膨大な数の神経細胞は、多くの軸索や樹状突起を伸ばしてネットワークを形成し、それぞれが数千から数万に及ぶ神経細胞と情報のやり取りをして演算を行っている。つまり、脳の情報処理について理解するには、多数の神経突起がどのように配線しているのかを明らかにする必要がある。
複雑に絡まり合った神経細胞の配線の様子を識別しやすくするため、3種類の蛍光タンパク質の組み合わせを用いて、神経回路の多色かつ高輝度で標識できる「Tetbow法」を開発したのが研究チームだ。しかし同手法では、中間色を含めてもせいぜい数十色までしか生み出せないため、複雑な神経回路を識別するためには不十分だったという。
そこで今回の研究では、蛍光タンパク質の種類を増やすことで、もっと多くの神経細胞を識別することが検討された。しかし、大半の人は3色色覚であり(極めて希に4色色覚の人もいる)、3原色の世界までしか識別できないことから、今回の研究では4原色以上の世界も識別できるプログラム(AI)も併せて開発することにしたとする。
まず多色標識については、Tetbow法が拡張され、7種類の蛍光タンパク質の組み合わせで神経細胞の突起が標識された。蛍光の波長が近い色素同士では、しばしば蛍光の漏れ込みが問題となるが、今回は数学的手法の「リニアアンミキシング」を用いて、漏れ込みを限りなくゼロにすることが実現されたとした。
次に、色の似ている・似ていないを数学的に表現し、コンピュータに解析させるための手法が検討された。さまざまな色について、赤、緑、青のそれぞれに分解して輝度を測定し、全体の輝度を揃えてやると、色情報は平面上に展開することが可能だ。数学的に「色が似ている」とは、この平面上での距離が近い、「似ていない」とは、この平面上での距離が一定の距離(閾値)以上であると言い換えることができ、同様の解析は4原色以上でも行えるという。
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