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経験が“音の聞き分け能力”を向上させる仕組みとは? - 名大が解明

マイナビニュース / 2024年6月28日 16時41分

画像提供:マイナビニュース

名古屋大学(名大)は6月27日、種ごとに異なるリズムを持つ求愛歌などを利用して同種のパートナーを選ぶショウジョウバエにおけるリズムの聴き分け能力の変化について、過去の音経験によって「求愛歌」のリズム識別能力が向上する脳の仕組みを解明し、2種類の神経細胞が互いに接続しあうという特徴的な形の神経回路が、この能力向上を担っている可能性があることを明らかにしたと発表した。

同成果は、名大大学院 理学研究科・トランスフォーマティブ生命分子研究所の上川内あづさ教授、同・井本圭亮大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、物理・生命科学・地球科学などの幅広い分野を扱う学術誌「iScience」に掲載された。

動物は、生まれた後の経験によって音を識別する能力やそれを担う脳機能が柔軟に変化するが、その仕組みの多くは謎に包まれている。ただし、ヒトの言語学習や鳥の歌学習をモデルとしたこれまでの研究により、音を識別する能力の変化に関与する脳の領域が明らかになってきている。さらに鳥の歌学習では、抑制性の「γ-アミノ酪酸」(GABA)や興奮性の「ドーパミン」などの神経伝達物質が関与することも示唆されていた。

ところがヒトや鳥類では、脳が巨大だったり遺伝子操作がしづらかったりするなどの理由により、これまでは個々の神経細胞に着目した研究が進めづらかったとのこと。そこで研究チームは今回、脳研究において広く使われているモデル生物「キイロショウジョウバエ」(以下、ハエ)に着目して、この謎に挑んだとする。

ハエのオスは求愛時に、求愛歌と呼ばれる羽音を奏でてメスにアピールし、メスがその音を気に入れば交尾となる。求愛歌のリズムはハエの種によって異なり、メスは同種のリズムや、それに近いリズムを持っている求愛歌を好む。研究チームは以前の研究で、サナギから羽化した後のハエに同種のリズムを持つ求愛歌を聴かせ続けると、同種のリズムの歌をより良く選べるようになることを解明していた。この音経験に依存したリズム識別能力の向上という現象は「歌識別学習」と呼ばれ、GABAの関与が明らかになっていたものの、どのような神経機構がGABAによる調節を制御するのか、その仕組みは不明だったという。

そこで今回の研究では、ハエにおいて細胞の性分化に寄与する転写因子「doublesex」(dsx)を発現する神経細胞に着目し、脳の片側で4つしかない抑制性の神経細胞群「pCd-2」が発見された。そこでdsxを発現するGABA作動性神経細胞群で、GABA産生を担う酵素の発現を抑制したところ、歌識別学習が消失したという。これは、pCd-2神経細胞からのGABAの放出が、歌識別学習に必要であることが示唆されているとしている。

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