1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

経験が“音の聞き分け能力”を向上させる仕組みとは? - 名大が解明

マイナビニュース / 2024年6月28日 16時41分

続いて、pCd-2神経細胞から放出されるGABAをどの神経細胞が受け取るのかを調べるため、ハエの脳のコネクトームデータベースによる探索が行われた。その結果、神経細胞群「pC1」が、pCd-2神経細胞群と直接シナプス接続することが発見された。また逆に、pC1もpCd-2へとシナプス接続していたという。

これまでに、メスのpC1はオスからの求愛シグナルを統合し、交尾を受け入れるかどうかの意思決定を担う興奮性の神経細胞であることが報告されている。また研究チームは以前、pC1が歌識別学習に必要であることも発見済みだ。今回の結果は、pC1とpCd-2が共に歌識別学習に必要な神経細胞として、興奮性と抑制性のシグナルを互いに伝え合う、という特徴的な形の神経回路を作り、歌識別学習を制御することが示唆されているとする。

次にpCd-2の制御因子を探すため、さまざまな神経伝達物質の受容体の発現を遺伝子操作法を利用し抑制したとのこと。その結果、dsxを発現するGABA作動性神経細胞群における、「GABAA受容体」とドーパミン受容体「Dop1R2」の発現が、歌識別学習に必要であることが発見された。これにより、GABAとドーパミンが音経験に応じてpCd-2の機能を制御することで、歌識別学習を成立させているというモデルが提案されたとした。

今回の研究により、音を識別する能力を経験に依存して変化させる脳の柔軟な仕組みを支えるメカニズムが、単一の神経細胞レベル、という高い精度で初めて解明された。研究チームは今回のハエを用いた研究成果をもとに、今後、発見された神経細胞群を軸として、歌識別学習を制御する脳の仕組みの全体像を明らかにできることを考えているとする。

さらに今回の成果は、「経験によって音を識別する能力やそれを担う脳機能が変化する」という、動物が示す脳の可塑性に共通する一般原理の抽出や、多様性の理解に対しても大きく貢献することが考えられるとしている。
(波留久泉)



この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください