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理研、高性能かつ伸縮性に優れる「有機太陽電池」の開発に成功

マイナビニュース / 2024年6月28日 19時33分

画像提供:マイナビニュース

理化学研究所(理研)は6月27日、高性能かつ伸縮性に優れる「有機太陽電池」を開発したことを発表した。

同成果は、理研 創発物性科学研究センター 創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎専任研究員(理研 開拓研究本部 染谷薄膜素子研究室 専任研究員)、同・染谷隆夫チームリーダー(開拓研究本部 染谷薄膜素子研究室 主任研究員)らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

有機太陽電池は、基板と基板上に透明電極と上部電極を備え、透明電極と上部電極の間には、発電層と正孔輸送層、電子輸送層が成膜されている構造だが、透明電極については、透明性・導電性・伸縮性の3つを備える材料がまだ見つかっていなかったという。そこで研究チームは今回、高いエネルギー変換効率(PCE)を有しながら、引張ひずみに対する高い耐久性を持つ伸縮性有機太陽電池の実現に挑むことにしたという。

今回の研究では、ポリウレタン基板上に、透明電極、正孔輸送層、発電層、上部電極の順に積層された伸縮性有機太陽電池が開発された。この透明電極には、導電性高分子材料「PEDOT:PSS」(P:PSS)に「4-(3-エチル-1-イミダゾリオ)-1-ブタンスルホン酸」(ION E)を添加したものとしなかったものを用意。異なる引張ひずみ下での電気的および伸縮性が評価されたところ、5mg/mLのION E添加透明電極は80%の引張ひずみで初期値の2倍未満の抵抗を、ION E未添加透明電極は40%の引張ひずみで初期値の122倍の抵抗をそれぞれ示したとのことで、ION E添加透明電極では伸縮性が向上すると共に、引張ひずみが増加しても抵抗の増加が緩和されることが示されたとする。

また、透明電極の亀裂発生ひずみ(COS)値はION E濃度の増加に伴い、明確に増加することを確認したともしており、この結果から、ION E添加透明電極は大きな引張ひずみ下でも亀裂の進行が抑制されることが示されたともしている。

さらにポリウレタン基板-透明電極間の界面特性の評価のため、ION Eの添加によるP:PSSの分子構造と結晶構造の変化に加えて、P:PSS内、およびP:PSSとポリウレタン基板との間の2つの分子間相互作用の精査として、ION E未添加と5mg/mLのION E添加透明電極の二次元接着力マップが取得されたところ、ION E未添加P:PSSの接着力が1.15nNと、ION E添加P:PSSの接着力(5.66nN)よりも低いことが確認されたとのことで、この顕著な微視的接着特性が、透明電極の伸縮性に反映されているのかどうかをマクロレベルに判断することを目的に、界面接着力の評価を行ったところ、力-変位曲線は、ION E添加サンプルに適用された力が、ION E未添加試験片に適用された力の2倍以上であることが示され、この堅固な界面接着が剥離を抑制し、ポリウレタン基板への機械的応力を分散させることで、透明電極の面内亀裂の駆動力が減少し、亀裂の発生と伝播が遅れ、透明電極の伸縮性が向上していることが確認されたという。

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