伊藤沙莉『虎に翼』のヒット、圧倒的な魅力を放つその理由
マイナビニュース / 2024年7月3日 6時0分
朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)が盛り上がっている。私があちこちの現場へ、取材や打ち合わせに出向くと十中八九、相手方が『虎に翼』を見ている。この雰囲気に既視感があると思ったら『あまちゃん』(2013年)だった。当時もふだんは朝ドラをまったく見ていないであろう、お父さんたちも虜になっていて、よく居酒屋で話したことを思い出した。
令和らしいと思ったのはSNS(主にX)での感想拡散だ。実は私も毎日、ドラマへの思いの丈をポストしながら、他の人の感想を見て楽しんでいる。一週間まとめて視聴するスタイルの人は「(ネタバレを)踏まないようにするのが大変」とも。期せずして心に飛び込んできた感動を誰かと共有したい。分かるよ、その気持ち。
とにもかくにも『虎に翼』! なのである。では今まで毎朝放送されてきた作品と何が違うのかといえば、やはり主役の伊藤沙莉。彼女から放たれる演技のパワーはとんでもないのだ。
○ドジっ子ではないヒロインの登場だ
『虎に翼』はいわゆるリーガルドラマである。日本初の女性弁護士、判事、家庭裁判所所長という大きな肩書きを背負う、三淵嘉子さんがモデル。ドラマでは主人公が佐田(猪爪)寅子(伊藤沙莉)となり、希望にあふれた学生生活、弁護士、戦時を経て、今再び法曹の世界で働いている。真っ直ぐで気持ちの良い女性であることは女学生時代から、母となった今でも変わらない。
放送1週目にして『虎に翼』の大きく人気を呼んだ。そこにはテンポの良いストーリー展開、エキストラの女性にも及ぶ細かな演出、明るく可愛らしい衣装と様々な要素を含んでいた。
とはいえ天下の朝ドラ。長い歴史があり、物語の選定に始まり、ヒロインのオーディション、豪華なキャストなど日本のエンタメの贅を尽くしたようなドラマなのである。全てが公正な基準値の元に作られていて、何も本作だけがスペシャルなわけではない。
では一体何が違うのか……とドラマを読み込んでいくと、今回のヒロインは"ドジっ子"ではなかった。寅子はもともと、当時の女学生では抜きん出るほどの頭脳を持っていた。それが仇となってお見合いを何度も失敗しているほど。結婚に不信感を抱き、職業婦人ではない何かになりたいと常に模索していた。
「お母さんの言う通り、結婚は悪くない、とはやっぱり思えない。なぜだろう。親友の幸せは願えても、ここに自分の幸せがあるとは到底思えない」
ただ思い返すと(全てではないけれど)、ヒロインが目標に向かって突き進み、その最中にトラブルが起きる、起こすというのは、朝ドラのパターンである。ただ歴代のヒロインたちはマイナスからスタート地点に立つことが多い。『ひよっこ』『おかえりモネ』『舞いあがれ!』などが代表的な例で、視聴者もまた"ドジっ子"ヒロインを応援したくなる。
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