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乳児用ミルクの脂質構造を母乳に近づけると乳児に好影響 - 順天堂大などの研究

マイナビニュース / 2024年7月1日 13時32分

画像提供:マイナビニュース

順天堂大学と明治ホールディングスの両者は6月28日、乳児用ミルクの主な脂質である「トリグリセリド」の構造を母乳に近づけることで、脂肪酸の一種である「パルミチン酸」の便中排泄が母乳栄養児と同様に抑えられることを見出したと共同で発表した。

同成果は、順天堂大大学院 医学研究科 小児思春期発達・病態学の清水俊明特任教授、順天堂大 医学部 小児科学講座の東海林宏道先任准教授を中心に、東京大学(東大) 医学部 小児科、東邦大学 医学部 新生児学教室、明治ホールディングス、明治の研究者も参加した共同研究チームによるもの。詳細は、栄養学に関する全般を扱う学術誌「Nutrients」に掲載された。

母乳にはさまざまな栄養素が含まれており、それが乳児の生育にとって重要となる。そうした乳児が摂取するエネルギーの半分を占める栄養素が脂質で、さらに細かく分けると、脂質のうちのおよそ1/5を占めるのがパルミチン酸だ。同脂質は、母乳中のトリグリセリドに最も多く含まれる「飽和脂肪酸」である。

そのトリグリセリドとは、グリセロール骨格に3分子の脂肪酸が結合する構造を有する脂質成分で、母乳中の脂質は主に同脂質が占めている。脂肪酸が結合する3つの部位のうち、外側は「sn-1位」または「sn-3位」、中央の結合位置が「sn-2位」と呼ばれ、この結合部位の違いは、脂肪酸の吸収の違いに関わる。sn-2位に結合している脂肪酸はリパーゼによる消化を受けずに効率よく吸収される一方、sn-1位・sn-3位の脂肪酸はリパーゼにより遊離脂肪酸となり、パルミチン酸は腸管内で「けん化」(油脂がアルカリと反応すること)して不溶性の脂肪酸カルシウムを形成するため、吸収効率が低下してしまう。

母乳中パルミチン酸の70~80%程度はsn-2位に結合しており、過去には乳児用ミルク中のパルミチン酸のsn-2位結合比を40~50%に高めると、脂質やカルシウムの排泄が減り、骨塩量やビフィズス菌数が増加するなどといった研究成果が報告されていた。しかし、これまで国内で乳児用ミルクのパルミチン酸sn-2位結合比率に着目した臨床研究は行われてこなかったとのこと。そこで研究チームは今回、生後1か月児における栄養方法の違いがパルミチン酸の吸収に及ぼす影響について検討したとする。

今回の研究では、順天堂大 医学部附属 順天堂医院、東大 医学部附属病院、東邦大 医療センター 大森病院で出生した健康な乳児149人が解析対象とされた。1か月健診で便を入手し、健診前の1週間について乳児の母乳摂取状況、乳児用ミルクの銘柄と授乳量が調査された。便中のパルミチン酸量は、エーテル抽出により便中脂質が抽出された後に、ガスクロマトグラフィーにより測定を実施。脂質を抽出する際に塩酸を加えて測定した結果は“便中総パルミチン酸濃度”、塩酸を加えずに測定された結果は“非けん化パルミチン酸濃度”とされ、便中けん化パルミチン酸濃度はその差し引きにより算出が行われた。

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