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東大など、100GPaの超高圧下における氷の水素結合の直接観察に遂に成功

マイナビニュース / 2024年7月1日 14時13分

画像提供:マイナビニュース

東京大学(東大)、日本原子力研究開発機構(JAEA) J-PARCセンター、総合科学研究機構(CROSS)、愛媛大学の5者は6月28日、世界で初めて100ギガパスカル(GPa)を超える圧力までの氷の粉末中性子構造解析を行い、80GPaを超える圧力下では水素結合が対称化することを直接観察したと共同で発表した。

同成果は、東大大学院 理学系研究科の小松一生准教授、同・山下恵史朗大学院生(研究当時)、同・伊藤颯大学院生、同・小林大輝大学院生、同・鍵裕之教授、JAEA J-PARCセンターの服部高典主任研究員、同・佐野亜沙美主任研究員、CROSS 中性子科学センターの町田真一副主任研究員、愛媛大 地球深部ダイナミクス研究センターの入舩徹男教授、同・新名亨准教授/シニア・ラボマネージャー、仏・ソルボンヌ大学/CNRSのステファン・クロッツ教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

氷は水(H2O)の固体として知られるが、同じ化学組成を持ちながら、結晶構造が異なるいくつもの多形が発見されており、2024年5月時点で少なくとも20種類が知られている(分類のため、後ろにローマ数字が付けられている)。家庭の冷蔵庫などで作られるような、通常の大気圧下で水を0℃以下まで冷却することでできる氷は「氷I」。しかし圧力や温度などの条件の違いによって結晶構造は変化し、例えば室温で水に対して1GPaの圧力を加えると現れるのが「氷VI」だ。1GPaとは、大気圧の100kPa(1mm2あたり10gの重量がかかる)の1万倍なので、1mm2あたり100kgの重量がかかるという高い圧力である。

さらに1GPaを超えてさらに圧縮していくと、2GPaを超えたところで別の結晶構造を持つ「氷VII」へと変化する。この氷は、水分子が体心立方格子の格子点に位置した結晶構造を持つ。この水分子は隣接する水分子と水素結合によって結びついているが、さらに圧縮していくと、隣り合う酸素原子間にある水素原子が、2つの酸素原子の中心に位置する「水素結合の対称化」を起こすことが半世紀以上も前から予想されていた。水素結合が対称化した氷は「氷X」と呼ばれ、その構造の最小単位はもはやH2Oではなくなってしまうため、他の多くの氷とは異なる性質を示すことが予想されている。

対称化に至る過程では、水素原子が「量子トンネル効果」により非局在化することや、水素原子が感じるポテンシャルの変化によって、マクロな弾性率が大きく変化することが理論的に予想されており、これらを裏付ける実験的な研究も報告されている。しかし、元素の中で最も軽い水素原子の位置を正確に把握することは難しく、これまで氷中の水素結合の対称化を直接観察した実験例はなかったという。ここ4~5年だけでも水素結合が対称化したという報告は数件あるが、これらの報告はいずれも間接的な手法によるものであり、対称化したとする圧力も、論文によって20~75GPaと大きくばらついているという状況だったとする。

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