国立天文台など、天の川銀河に理論予測の倍以上も衛星銀河があると解明
マイナビニュース / 2024年7月1日 15時0分
国立天文台(NAOJ)と東北大学の両者は6月28日、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam」(HSC)が撮像した最新データの中から、天の川銀河に付随する矮小(衛星)銀河を新たに2個発見し、研究チームが以前に発見した衛星銀河なども合わせると、理論予測の倍以上もの衛星銀河が存在することが明らかになったと共同で発表した。
同成果は、NAOJの本間大輔特別客員研究員、東北大大学院 理学研究科 天文学専攻の千葉柾司教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する欧文学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。
大型銀河である天の川銀河は、いくつもの衛星銀河を従えているが、実際にいくつ従えているのか、正確にはわかっていない。なお矮小銀河は、ダークマターの小さな塊が持つ重力に引かれてガスが集まり、そこから星々が生まれることで形成されたと考えられている。つまり衛星銀河の数の問題は、ダークマターの性質やその正体に関わっているのである。
標準理論におけるダークマターは、「冷たいダークマター」と呼ばれる素粒子群だと考えられている。それに基づき、天の川銀河の周りには1000を超えるダークマターの塊と、それに対応する衛星銀河が存在すると予想されていた。しかし、これまでの観測では数十個の衛星銀河しか観測されておらず、この数の食い違いは「ミッシングサテライト問題」とされている。この問題を解決するには、標準理論が予測するダークマターの正体とは異なるもののために塊の数がもっと少ないのか、あるいはダークマター塊の中でガスから星が生まれる過程に問題があるのかを解明する必要があるという。
またミッシングサテライトの問題へのもう1つの糸口として、未発見の暗い衛星銀河が、天の川銀河の遠方に多く存在しているという可能性も考察されている。そのような暗い衛星銀河の探査で最も威力を発揮するのが、すばる望遠鏡の直径8.2mの主鏡とHSCの組み合わせだ。
HSCを用いて広い天域を観測する「戦略枠プログラム」(HSC-SSP)で得られたビッグデータから矮小銀河の探査を進めてきた研究チームは、これまでにおとめ座「Virgo I」、くじら座「Cetus III」、うしかい座「Bootes IV」と新しい矮小銀河を見つけていた。そして今回、HSC-SSPの最新の公開データから新たに2個の矮小銀河「Virgo III」と、ろくぶんぎ座「Sextans II」を発見。これらはすべて、太陽系から30万光年以上離れた距離にあることも明らかにされた。
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