宇宙から飛来する最高エネルギー宇宙線の正体は重い原子核の可能性、東大などが推定
マイナビニュース / 2024年7月2日 15時21分
しかし、大気蛍光法の場合、晴天の夜、かつ月が出ていない時期という制約があり、観測統計量は地表検出器法の約10%程度と少なかったことから、低いエネルギー量の場合、その組成は陽子やヘリウムのような軽い原子核であることまでは分かったものの、エネルギー量が高くなり、10EeVを超すレベルになると、判別が難しいという課題があったという。
地表検出器法のデータを活用して元素核の決定に挑戦
そこで今回の研究では観測頻度が高い地表検出器による14年間の観測で蓄積された観測データを活用して、元素核の決定に挑むことにしたとする。具体的には、宇宙線源の分布を近傍の銀河分布と同じ、この場合は2MASSカタログの250Mpc(パーセク)以内の銀河の分布に従うと仮定(ある一定程度の距離に超銀河団があり、全体で宇宙大規模構造に従っていると仮定)した上で、宇宙線を検出した際にその源がどの程度ぼやけて見えるのかを広がり角θ(シータ)100で表現して仮定。θ100の値を変えていく到来方向の分布の予測と、実際の観測による到来方向分布を比較して、もっとも一致するθ100を選別する作業を実施。また、源の分布は同じと仮定しながら、磁場分布を仮定する場合や電荷を仮定する場合についても宇宙線を飛ばして伝播する疑似データを作り、その疑似データとθ100が一致する値の探索も実施し、実際のデータと疑似データそれぞれに最適なθ100を導き出したという。
その結果、銀河間磁場が無視できるほど小さいと仮定した場合、100EeV以上の最高エネルギー宇宙線データはいくつかの重い組成モデルがθ100=200°という結果を示し、これは鉄程度に重い原子核に相当する電荷を有していることを意味すると研究グループでは説明する。
また、研究グループでは、もし100EeV以上の最高エネルギー宇宙線が重い原子核であるとすると、起源天体の組成や宇宙線の加速機構を反映したものであると考えられることから、精密な組成比を求めることができれば、その起源解明のヒントになる可能性があると指摘。陽子の場合、宇宙空間を伝わってくる間に、エネルギーを消失してしまうというモデルがあるが、重い原子核の場合はそうではない可能性があり、源での加速限界を表している可能性があるとするほか、ニュートリノやガンマ線に対する期待値が減ることとなるため、荷電粒子を対象とした観測の重要性が増すことになるとしている。
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