大阪公大、光渦レーザーで磁性微粒子を高精度に印刷する技術を開発
マイナビニュース / 2024年7月2日 17時38分
大阪公立大学(大阪公大)は7月1日、粒径100~300nmの磁性微粒子が高濃度に分散した溶液の液膜に「光渦(円偏光)レーザー」を照射することで、直径数μmの単結晶を、狙った場所に高い精度で印刷することに成功したと発表した。
同成果は、大阪公大大学院 理学研究科の柚山健一講師と千葉大学大学院 工学研究院の尾松孝茂教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学協会が刊行する材料科学を扱う学術誌「APL Materials」に掲載された。
ノズルから微小液滴を吐出することで、用紙などの対象物に直接印刷を行うインクジェット方式は、現在、個人・家庭用プリンタの主流の印刷技術だ。しかし、目詰まりしやすいという短所を抱えている。これは、微粒子が高濃度に分散したコロイド溶液を利用しているためで、構造上、ノズルでの目詰まりが起きやすい。そのため、こうした目詰まりの起きないような新しい印刷技術が求められている。
我々が目で捉えられる可視光などの電磁波は、電場と磁場の変化が波(振動)として伝わっている。電磁波には、その電場と磁場の波が偏った(規則的な)偏光と呼ばれるものがあり、さらにその中には、波の伝わり方が円を描く(電磁波は進んでいくので、結果的に螺旋状となる)「円偏光(光渦)」がある。研究チームが取り組んでいるのは、その光渦を用いたレーザー光を照射して、パターニングしたい物質(ドナー物質)を転写する新しい印刷技術「光渦レーザー誘起前方転写法」(OV-LIFT)の開発だ。同技術は、透明基板上に形成したドナー液膜に対して光渦レーザーパルスを照射し、前方にドナー液滴を飛翔させて転写するというもの(原理的に転写できる物質の粘度や濃度に制限がない)。今回の研究では、磁性ナノ粒子が分散した溶液に対してOV-LIFTを応用した際、どのように粒子が印刷されるのかを調べたという。
今回の研究でドナー物質として使用されたのは、「フェライトナノ粒子分散液」だ。通常のレーザー光(ガウスビーム:平行な波面とガウス分布状の強度分布を持つ光)を照射して印刷を行うと、ナノ粒子がバラバラに散らばった状態で印刷されてしまう。一方で光渦を用いると、散らばったナノ粒子凝集体の中心に直径数μm程度のコアが印刷される。そのコアに関して、断面観察を用いた詳細な調査を行った結果、コアは微粒子が凝縮しているのではなく、1つの大きな粒子として形成されていることが判明した。
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