名工大、全固体電池の固体電解質開発を加速させる有用なパラメータを解明
マイナビニュース / 2024年7月4日 17時59分
名古屋工業大学(名工大)は7月3日、全固体電池の固体電解質用材料で重要な変形能に有用な設計パラメータを解明したと発表した。
同成果は、名工大大学院 工学研究科工学専攻(生命・応用化学領域)の谷端直人助教、同・中山将伸教授らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する材料化学全般を扱う学術誌「Journal of Materials Chemistry A」に掲載された。
全固体電池は現状、粒子間の接触性が低く、粒子間抵抗が大きいことが、固体電解質を適用する上で大きな課題となっている。
ハイスループット計算による材料スクリーニングは、高リチウム(Li)拡散性を持つ新しいLi+イオン伝導体を解明するために広く利用されてきたものの、変形能に明確な相関を示す設計パラメータを用いた材料スクリーニング例は報告されていなかったとする。このスクリーニング指標を明らかにできれば、高い変形能を持つ材料の発見を容易にできるという。
全固体電池製造時の密な粒子間接触は塑性変形により達成される。このタイプの変形は主に転位の移動により起こり、その際に必要な応力はテイラーモデルから剛性率「G」に比例することが知られている。粉末サンプルの圧縮を考慮すると、剛性率の平均値が変形に必要な応力に関係していると考えられるため、研究チームは今回、その剛性率の逆数を変形能の指標として使用することにしたとする。
まず、結晶構造データベースにあるLi-Cl化合物について包括的に計算した平均剛性率がグラフ化された。その中のLi拡散係数は、力場を使用した分子動力学シミュレーションを使用して計算され、熱力学的安定性もデータベースから抽出が行われた。その結果から今回の研究では、剛性率が異なる6つの塩化物化合物(Li2CoCl4、Li2CrCl4、Li10Mg7Cl24、Li4Mn3Cl10、Li2FeCl4、LiAlCl4)が検討材料として選択され、それらの変形能(相対密度と粒界抵抗)を実験的に評価、剛性率と変形能の相関が調べられた。
合成された塩化物の圧粉体に対して、Li拡散性を評価するためにインピーダンス測定が実行され、ナイキスト線図から得られた全抵抗Rtotal値とネルンスト-アインシュタインの式を用いて、伝導度拡散係数が計算された。同係数は、化学拡散係数に比べて過小評価されることがよくあるという。それにも関わらず、塩化物材料の伝導度拡散係数は、一般的な酸化物および硫化物正極材料の化学拡散係数よりも高いものが多く、今回の計算による高Li拡散材料のスクリーニング手法の有用性が示されているとした。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
熊本大、高強度と難燃性を併せ持つミルフィーユ型マグネシウム合金を開発
マイナビニュース / 2024年7月11日 19時57分
-
東工大など、中温で高性能な燃料電池を低コストで製造可能にする物質を発見
マイナビニュース / 2024年7月9日 18時25分
-
茨城大、マリモ状の炭素繊維を用いて固体高分子形燃料電池の高性能化に成功
マイナビニュース / 2024年7月9日 11時6分
-
ソフトバンクなど、全固体電池の高密度化の技術開発に成功
マイナビニュース / 2024年7月3日 18時5分
-
【ライブ配信セミナー】次世代二次電池の研究開発、展望と課題 キーマテリアルとしての電解質設計 ~ 液体から固体へ ~ 7月23日(火)開催 主催:(株)シーエムシー・リサーチ
PR TIMES / 2024年6月27日 10時45分
ランキング
-
1コントローラー付きドックってPCで動画見る時に便利かも!
&GP / 2024年7月25日 6時0分
-
2中国のサイバー攻撃グループ、Macを狙うマルウェアアップデート
マイナビニュース / 2024年7月25日 12時46分
-
3プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
ねとらぼ / 2024年7月18日 22時0分
-
4「ガンズ」スラッシュ義娘が急死 死後に更新されたインスタの内容が波紋「謝る必要なんてない」「こんな気持ちにならないでほしかった」
ねとらぼ / 2024年7月24日 16時51分
-
5全世界で発生したCrowdStrike“ブルスク”問題、原因からIT担当者が検討すべきセキュリティ対策を考察する
ITmedia PC USER / 2024年7月24日 15時5分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください