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3個の中性子のみから成る量子系は不安定、東北大などが実験にて証明

マイナビニュース / 2024年7月5日 17時50分

画像提供:マイナビニュース

東北大学、東京大学(東大)、理化学研究所(理研)、富山大学、大阪大学(阪大)、法政大学(法大)の6者は7月4日、原子核を構成する核子のうちの中性子だけ、もしくは陽子だけを凝集した系を人工的に生成し、3個の中性子のみと、3個の陽子のみから成る量子系を調べた結果、その不安定性を明らかにしたと発表した。

安定かどうかを調べるこれまでの研究では、二中性子系と四中性子系の準安定性を示唆する実験結果が得られていたが、強い力の理解を進めるために必要な核子数が3個の系の安定性は未解決だったことから、3個の中性子のみと、3個の陽子のみから成る量子系を生成して調べた結果、その不安定性を明らかにしたことを共同で発表した。

同成果は、東北大大学院 理学研究科の酒井大輔 大学院生、同・宇津城雄大 大学院生、同・亀谷晃毅 大学院生、同・浦山廉 大学院生、同・三木謙二 准教授、東大大学院 理学系研究科 附属原子核科学研究センターの今井伸明 准教授、理研 仁科加速器科学研究センター(RNC)の上坂友洋 部長、富山大 水素同位体科学研究センターの波多野雄治 教授、阪大 核物理研究センター(RCNP)の民井淳 教授、法大 自然科学センター・法学部の石川壮 教授らを中心とした国際共同研究グループによるもの。詳細は、米国物理学専門誌「Physical Review Letters」に掲載された。

原子核を構成する陽子や中性子は、粒子間距離がわずか数fmの領域でのみ強く働く引力である「強い力」を起源とする核力と呼ばれる相互作用によって互いに束縛し合って形成されている。その一方で、陽子同士の間には、電気的な相互作用であるクーロン力が斥力として作用する。身の回りの一般的な原子の原子核が分解しないのは、クーロン斥力に対して核力に依る引力が打ち勝っているため、安定した束縛状態が形成されてためとされている。

それに対し、中性子間にクーロン斥力が作用しないので、中性子のみを集めた原子核である「多中性子系」は安定化しやすいように思われる。しかし実際には、(1)中性子同士の間の引力が、中性子-陽子間の引力よりも弱く、(2)パウリの排他的原理により同種粒子系はエネルギーが高くなる、という2点が主要因となって、多中性子系は束縛状態を形成するかしないかの境界領域にあることがこれまでの研究から指摘されている。

多中性子系の研究では、二中性子系と四中性子系は先行実験があり、それらが束縛する寸前のエネルギー領域に構造が発現することが解明済みであるが、奇数の粒子数で最も基本的かつ重要な多中性子系である三中性子系については、研究の空白地帯だったという。そこで研究グループは今回、三中性子系の観測を実現させると共に、中性子と陽子を入れ替えた三陽子系の観測も実施し、多粒子系の出発点ともいえる粒子数3の系の安定性についての検証を実施することにしたという。

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