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理研など、種類が異なる冬眠の仕組みをデータと数学を用いて解明

マイナビニュース / 2024年7月10日 15時54分

画像提供:マイナビニュース

理化学研究所(理研)と北海道大学(北大)は7月9日、冬眠を行う哺乳類に見られる大きな体温変動の背後に、信号の周波数を変化させて伝えるFMラジオのように、周波数(体温の周期変動)を変化させる仕組みが存在することを発見したと共同で発表した。

同成果は、理研 数理創造プログラムの儀保伸吾特別研究員、同・黒澤元専任研究員、北大 低温科学研究所の山口良文教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、睡眠や概日リズムほか生物学的リズムに関する全般を扱う学術誌「npj Biological Timing and Sleep」に掲載された。

冬眠は、寒冷と餌の枯渇に見舞われる冬を越えるため、動物が可能な限り代謝を下げて眠るようにしてやり過ごす際に、体温が平常時より低下する現象のことを言う。冬眠は長く研究が行われているが、「なぜ冬眠するのか」「どのように冬眠を始めるのか」「冬眠中に動物の体内で何が起きているのか」「人間は冬眠できるのか」など、まだわかっていないことは多い。

冬眠するほ乳類はその様式により、便宜的に「義務的冬眠動物」と「条件的冬眠動物」に大別される。ハムスター類は条件的冬眠動物で、冬のような飼育環境に置かれると、実際の季節に関係なく、数か月の後に自発的に冬眠を始める。一方、クマやジュウサンセンジリスなどの義務的冬眠動物は、冬のような実験環境下でずっと飼育された場合でも、約1年の周期で冬眠を繰り返す。後者の冬眠には、概年リズムが関係していると考えられている。

小型の冬眠動物は、体温と代謝を下げる「深冬眠」と呼ばれる状態と、通常の体温に戻る「中途覚醒」と呼ばれる状態を何度も繰り返す。この深冬眠と中途覚醒の繰り返しという大きな体温変動は冬眠の重要な特徴だが、その生理学的な意義は不明だという。また体温データは、冬眠中でも測定可能な重要な指標とされているが、ノイズが多く、変動の周期も必ずしも一定でないため、詳細な時系列データの解析が困難だったとする。そのため、こうした体温変動の背後にある原理も解明されていない。

そこで研究チームは今回、条件的冬眠動物のシリアンハムスターの長期かつ高解像度の体温データセットを基に、実験データを精度よく再現する数理モデルを探索することで、冬眠動物に見られる体温変動の制御原理の同定に挑むことにしたという。

その結果、FMラジオのように徐々に周波数が変化していくと仮定した数理モデルがシリアンハムスターの体温データを再現することが判明し、同数理モデルを「周波数変調モデル」と提唱することにしたとする。同モデルでは、長い周期(数百日)が短い周期(数日)のリズムの進行を調節する。これまで、概年リズムとは関係なく冬眠するとされてきたシリアンハムスターにおいて、数百日の周期が発見されたことは予想外とした。

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