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名大、10kW以上の熱を2.5m先まで無電力輸送できるループヒートパイプを開発

マイナビニュース / 2024年7月10日 18時7分

画像提供:マイナビニュース

名古屋大学(名大)は7月9日、「ウィック」と呼ばれる多孔質体で生じる毛細管現象をポンプの駆動力に利用することで、電力を使用せずに半永久的に熱を輸送できる技術の「ループヒートパイプ技術」を用いて、電力を用いずに10kW以上もの熱を2.5m先まで輸送することに成功したと発表した。

同成果は、名大大学院 工学研究科の長野方星教授、同・渡邉紀志特任准教授、同・上野藍講師、同・Shawn Somers-Neal大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、熱および質量移動に関する全般を扱う学術誌「International Journal of Heat and Mass Transfer」に掲載された。

焼却炉の廃熱でプールの水を温水にするなどの施設が全国各地にあるなど、廃熱利用は行われているものの、地球の温暖化を考慮すれば、さらに廃熱利用を増やす必要があり、実際にまだまだ未利用な廃熱が多く存在している。しかし、廃熱源から利用先までの距離が離れている場合が多いため、熱を損失なく運ぶ技術がなければ、有効活用は難しいとのこと。従来の機械式ポンプは電力が必要な上に、顕熱輸送で効率が悪く、機械的な機構の寿命も短いといった問題があり、無電力で高効率に半永久的に熱を輸送する技術が求められていた。

そうした中で注目されているのが、多孔質体のウィックが液を吸収する毛管現象をポンプの動力とする、電力不要の熱輸送デバイス「ループヒートパイプ」。これまで電子機器の冷却などに使われてきたヒートパイプなどと比べ、高いポンプ力を有しているのが優れた点だという。ただし、これまでのところは、人工衛星の電子機器の冷却を対象とした、熱輸送量100W、熱輸送距離1m程度の物が多く研究されてきており、さらに大きなスケールでの利用が求められていた。

そのような背景のもと、適用範囲のさらなる拡大のため、kWクラスの大型のループヒートパイプ、熱輸送距離10mクラスの長距離ループヒートパイプ、モバイルデバイス冷却用の厚さ1mm以下の薄型ループヒートパイプなど、さまざまな研究開発を進めているのが研究チームだ。今回の研究では、ループヒートパイプの性能を上げるため、ウィックで運ばれた液体を効率よく蒸気に変えるために重要な蒸発器内の構造の開発のために赤外域と可視域での顕微計測手法を開発し、実験と数値シミュレーションを通じて、ウィック近傍での液体、蒸気の振る舞いを解明し、熱伝達性能を上げるための蒸発器構造を提案することにしたという。

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