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東大、JWSTの観測に有益な3種のダングリングOHの光吸収効率を解明

マイナビニュース / 2024年7月11日 19時9分

画像提供:マイナビニュース

東京大学(東大)は7月10日、新規の赤外分光法「赤外多角入射分解分光法」(以下、新規分光法)を用いて、絶対温度20K(-253℃)という低温な氷表面における「ダングリングOH」(以下、DOH)の光吸収効率を明らかにし、3種類のH2OのDOH(2配位、3配位、一酸化炭素(CO)が吸着)による吸収線について、その光吸収効率を測定したところ、その値は「氷内部の4配位のH2O」よりも「孤立したH2O一分子」の光吸収効率の値に近いことを解明したと発表した。

同成果は、東大大学院 総合文化研究科・教養学部の羽馬哲也准教授、同・長谷川健大学院生、同・柳澤広登学部生(現・東大大学院 理学系研究科、兼 東大 宇宙線研究所 大学院生)、同・長澤拓海大学院生(現・東大大学院 総合文化研究科、兼 グルノーブル・アルプ大学 大学院生)、同・佐藤玲央大学院生、同・沼舘直樹特任助教(現・筑波大学 数理物質系化学域 助教)らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

惑星系形成時の材料物質の1つに、氷の微粒子(氷星間塵)がある。また星間分子の多くは、その氷星間塵の表面で起こる化学反応を介して生成されている。そのため、氷星間塵の表面構造を理解することは、惑星形成の素過程である氷星間塵同士の凝集や、氷星間塵の表面で起こる化学反応の理解に重要とされている。

氷星間塵の構造は、主に赤外線による観測で研究が進められており、およそ3600~3000cm-1あたりに氷内で水素結合ネットワークを形成した4配位のH2Oに由来する吸収線(ピーク)が観測される。一方、実験室で氷の赤外スペクトルを測定すると、3720cm-1と3696cm-1あたりにも非常に弱いピークがある。このピークはDOHに由来するものであり、これまでの研究から3696cm-1と3720cm-1のピークはそれぞれ2配位と3配位のH2OのDOHに起因することが解明されていた。この2つのDOHのピークは、氷の構造や物性(空孔率など)を鋭敏に反映する非常に有用なピークであるといい、またDOHのピーク波数から、どのような分子がDOHに吸着しているのかを調べることも可能だ。

2023年、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって氷星間塵の赤外スペクトルが測定され、3664cm-1にDOHによるピークが観測された。赤外線天文学では、観測から得られた「氷の赤外スペクトルの吸光度」と実験や理論で得られた「氷の赤外光に対する光吸収効率」から、“氷の存在量”を求めることが一般的だ。氷内部の4配位のH2Oに由来する幅広いピーク(3600~3000cm-1)の光吸収効率についてはこれまで多くの研究があるが、氷表面のDOHについては、光吸収を議論する上で重要な「ランベルト=ベール則」が成立せず、その光吸収効率を測定することは困難だったとのこと。そのため、JWSTによって氷星間塵のDOHが観測されたにも関わらず、その存在量を定量することは不可能だったという。そこで研究チームは今回、新規分光法を用いて、20Kという氷星間塵の温度環境に近い条件でDOHの赤外光吸収効率の定量を試みたとする。

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