慶應大の新たなインキュベーション施設「CRIK信濃町」の価値を生み出す仕掛けとは
マイナビニュース / 2024年8月30日 13時0分
同施設を開設した背景について新堂氏は、「スタートアップ部門では、学内の起業環境整備のためのさまざまな取り組みを進めており、その1つにインキュベーションの場づくりがあります。さらに、医学部では、医学の成果をスタートアップという形で患者さんらに届けることを目指して多くの起業がなされており、その場として、信濃町キャンパスの中に起業のためのインキュベーション施設を作りたいという思いがありました。このように両者の思いが一致したことから、大学本部と医学部とで協働してこの施設を作ることになりました」と語った。
計画的偶然性を生み出す共用施設や回遊設計を施した施設内
インキュベーション施設は、複数のオープンスペースやコミュニティスペースなど、入居者向けの共用施設が充実している点が特徴だ。当初は、すべてを賃貸オフィスにする案もあったが、入居者同士や起業家、ベンチャーキャピタル、士業、大学関係者との出会いや交流を活発にするために、コミュニティスペースやラウンジを設けることにしたという。
電通は、これまでも慶應義塾大学 イノベーション推進本部のウェブサイト構築やスローガン作成などの広報支援を行っており、CRIK信濃町では、施設のコンセプトづくりや設計、施設ウェブサイトやパンフレット作成、関係部署の意見調整など、開設準備を進めるにあたってのプロジェクトマネジメント役を務めてきた。
賃貸料収入が期待できる個室を減らしてまでコミュニティスペースを設けた狙いについて高井氏は、「越境」というキーワードで説明した。
「インキュベーション施設に期待されているところは、さまざまな業界の方々と交わる部分です。その観点で考えたときに『越境する』ということが重要だと思っています。そのために、『計画的偶然性』をいかに作るのかといったところは意識しました。インキュベーション施設で、他社の人たちとすれ違う環境など、何があるんだろうと立ち止まる瞬間を創出するために、随所にみなさんが集まれるポイントを作っています。また会議室の並び方も微妙に変え、つい回ってみたくなる、つい行きたくなる回遊設計にしています」(高井氏)
新堂氏も、他の施設を見学する中で、コミュニティスペースの必要性を実感したという。
「コンセプトや間取り、壁にどういうものを置いているのか、盛り上がっているのか、どのような運営を行っているのかなど、民間や大学も含めていろいろなインキュベーション施設を見学しました。盛り上がっているところは、人が集まれる場所があります。入館したら受付があって、あとは全部個室だと新たな出会いや交流が生まれないのではないかという不安があり、イノベーションが起きにくい形になってしまうので、そうした視点から考え直しました」(新堂氏)
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