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量研機構など、脳が見た物について視覚的に記憶するネットワークを特定

マイナビニュース / 2024年7月16日 12時35分

画像提供:マイナビニュース

量子科学技術研究開発機構(QST)と京都大学(京大)は7月12日、見た物についての記憶を保持する脳ネットワークをサルで特定し、その作動原理を解明したと共同で発表した。

同成果は、QST 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究センターの平林敏行主幹研究員、同・南本敬史次長、京大 ヒト行動進化研究センター 高田昌彦教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

目の前の物が一度隠され、再び見せられても同一の物とわかる物体の視覚短期記憶には、脳内でも特に、物体の色や形についての高度な視覚情報を処理する「側頭皮質前方部」が重要。しかし、脳機能は複数領域のネットワークによって実現されており、視覚短期記憶も側頭皮質前方部が他の領域とネットワークを形成していることが推測されていた。

ところが、どのようなネットワークが形成されてどう働いているのか、またネットワーク内でいつどのような情報がやり取りされるのか、仮にそれが寸断されたら記憶がどうなるのか、といった点はこれまで、技術的な困難さから調べられていなかった。そこで研究チームは今回、視覚記憶課題を訓練したサルを用いて、その課題を解いている時の全脳血流量を計測し、記憶に関わる全脳の神経活動を調べることにしたという。

課題は、まず画面に1つの図形を呈示した後、数秒間隠しておき、その後に同じ図形と別の図形を同時に呈示し、サルが同じ図形に触れれば、正解としてジュースをもらえるというもの。その結果、見た図形を覚えている間に強く活動する脳領域として、側頭皮質前方部、「前帯状皮質」、「後頭頂皮質」、「眼窩前頭皮質」が捉えられた。さらに機能的MRI結合解析を用いて、側頭皮質前方部と最も強くつながっているのが、これまでは情動や価値に基づく意思決定などに関わると考えられてきた眼窩前頭皮質と判明。両領域による前頭葉-側頭葉ネットワークによって、物体の視覚短期記憶が実現していることが示唆された。

続いて、眼窩前頭皮質の活動を人為的に一時的に抑制し、視覚記憶課題の成績が調べられた。すると、視覚機能は正常なまま、記憶成績だけが低下。つまり、眼窩前頭皮質は単に視覚記憶に関連した活動を示すだけでなく、視覚記憶に必要であることがわかったのである。

その記憶成績低下の背景に、どのようなネットワーク作動の変化があるのかを調べるため、今度は眼窩前頭皮質の活動を抑制した上で記憶課題を解いている時の全脳活動が、PETを用いて調べられた。その結果、眼窩前頭皮質の活動の抑制により、同時に側頭皮質前方部の活動も低下。記憶成績の低下は、前頭葉-側頭葉ネットワーク全体の機能不全によることが示唆された。

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