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産総研、土壌中の有害な水銀を現場で高感度に検出できる手法を開発

マイナビニュース / 2024年7月16日 18時18分

画像提供:マイナビニュース

産業技術総合研究所(産総研)は7月12日、生物に対して極めて毒性が強いことが知られる水銀を、専門的な知識などなしで、なおかつ現場で0.5ppbの微量であっても土壌中から検出する手法を開発したことを発表した。

同成果は、産総研 センシングシステム研究センター センサー情報実装研究チームの竹村謙信研究員、同・岩﨑渉主任研究員、坂本石灰工業所の共同研究チームによるもの。詳細は、ナノマテリアルに関する全般を扱う学術誌「Nanomaterials」に掲載された。

水銀は毒性が高く、土壌に関する環境基準値が0.5μg/L以下と厳しく定められている。しかし現在は、試料を現場から専門の検査センターなどに輸送し、大型の検査機器を用いて重金属類の分析を行う必要があり、検査が容易ではないことが課題となっていた。専門知識が不要で、現場で誰でも実施できるような検査方法を開発できれば、自主的に検査している多くの現場で安全確認に必要な時間を短縮でき、工期の短縮など負担の軽減につながるとする。また、水銀の安価な検査法が普及すれば、地下水を飲んでいる地域でも日々のモニタリングで飲料水の安全性を確かめることが可能になる。そこで研究チームは今回、電気化学的な反応から水銀の検出を行う技術の開発に取り組むことにしたという。

今回の研究では、高感度な電気化学測定が原理とされた。まず土壌内の成分を水に溶出させた土壌溶出液を作製し、そこに電極を差し込んで電圧をかけると、陰極側に水銀イオンを含む溶質が還元され、電極表面に吸着する。次に、電極に逆の正電圧をかけると、吸着物の酸化反応が起き、水溶液中に再びイオンとして放出されることで電流が流れる。この時、物質ごとに反応が起きやすい電圧が異なるという特徴を利用して、かける電圧を徐々に変化させながら電流を計測すると、それぞれの物質の反応(=物質の存在)を電流値のピークとして捉えられるという仕組みだ。

今回の測定法は装置を小型化しやすく、安価にしやすいことが大きな特徴だが、溶媒や電極の微小な差、夾雑物の有無で信号に影響が出てしまうほど外乱に弱いことが欠点だという。そこで、まず溶媒成分とpHを固定化することで、検体である土壌の溶出液から濾過により大きな粒を取り除くという最低限の前処理のみで濃度0.5ppbの微量な水銀検出を行えるようにしたとする。

また、夾雑物による影響を低減する独自のピーク検出法が開発された。計測データを数値的に処理することで、夾雑物による波形の変化を低減することができ、目的の水銀による電気化学反応の信号のみを捉えることに成功。なお、ここでは得られた計測データを二階微分することで、ノイズに埋もれやすいピーク信号を検出しやすくしているとした。

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