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東大、火星大気中に塩化水素が広域かつ非一様に存在していることを観測

マイナビニュース / 2024年7月23日 14時53分

画像提供:マイナビニュース

東京大学(東大)は7月19日、ハワイ・マウナケア山頂の天文台群にある米国航空宇宙局(NASA)の「IRTF望遠鏡」を用いた観測により、火星大気にわずかに存在し、同惑星における塩素循環の鍵となる大気分子である塩化水素の全球分布取得に初めて成功し、同化合物が火星全球に広く存在することを示すと共に、空間分布が非一様であることを明らかにしたと発表した。

同成果は、東大大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 アストロバイオロジーモジュールの青木翔平講師らの研究チームによるもの。詳細は、惑星科学とその関連分野を扱うオープンアクセスジャーナル「The Planetary Science Journal」に掲載された。

火星は、周回機に加え、ローバーを含む着陸機も含めてこれまで人類が多くの探査機を送り込んできた惑星として知られ、「ロボットの惑星」などとも呼ばれる。現在は、いくつもの国や地域の宇宙機関が探査機を送り込んでおり、欧州宇宙機関(ESA)では現在、複数の探査機を送り込む「エクソマーズ計画」を実施中だ。その第1弾として火星軌道に投入され、2018年から生命や地質活動の痕跡となる気体の探索や火星大気の鉛直高度分布などを調査しているのが「エクソマーズ・トレース・ガス・オービター」(TGO)であり、火星大気中にわずかであるが、塩素を伴う分子(塩化水素)が存在することを初めて示した実績を誇る。

火星の地表面には、塩素を伴う塩や鉱物が広く存在することがわかっていたことから、大気中における塩化水素の発見は、火星で何らかの塩素の循環が存在することを示唆しているという。しかし、同化合物の生成消滅過程はこれまでまだよくわかっていなかったとする。同化合物が火星全球でどのような分布をしているのかを調べることは、その生成消滅過程を理解する手がかりになるが、これまでのTGOによる調査は「太陽掩蔽観測」(明るい太陽を光源として用いることで精度の高い大気スペクトルを取得でき、微量大気成分の観測に適した観測手法)であるため、一度に火星全球を広く観測することができず、また低緯度域や地表面付近の大気を調べることが困難だったという。

そこで研究チームは今回、国立天文台のすばる望遠鏡も稼動しているハワイ・マウナケア山頂の天文台群の1つであるIRTF望遠鏡の赤外線分光装置を用いて、2020年9月7日と2020年11月1日に火星観測を行い、衛星観測では困難な地表面付近の大気における塩化水素の全球分布取得を試みたとする。

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