北大、皮膚細胞が飢餓状態にあると自ら一定の模様を形成することを発見
マイナビニュース / 2024年7月23日 18時38分
北海道大学(北大)は7月19日、皮膚の細胞が飢餓状態にあると、自ら粗密の差がある一定の模様を形成することを発見したと発表した。
同成果は、北大大学院 医学研究院の夏賀健准教授、同・眞井洋輔客員研究員らの研究チームによるもの。詳細は、ライフサイエンス全般を扱う学術誌「Life Science Alliance」に掲載された。
外敵からのバリアである皮膚は、外から順に表皮、真皮、皮下脂肪組織の3層で形成され、表皮が十分な厚みを持つことでそのバリアとしての機能を持つことができる。表皮細胞は増殖・分化という役割を、それぞれの細胞が適切な割合で担うことにより、表皮にとって必要な厚みが維持されるが、その役割分担のメカニズムは未解明だったとする。そうした中で研究チームは、表皮細胞の培養中に細胞が自ら模様を作る現象を発見し、その模様が表皮細胞の役割分担を決めるメカニズムになるのではないかと考察し、今回の研究を開始したという。
表皮細胞の模様に着目した培養方法を再生医療に応用するため、培地枯渇条件(3日に1回の交換)と培地潤沢条件(毎日交換)で、表皮細胞から厚みのある表皮を作る3次元培養が行われ、どちらの条件がより良い厚みを持つ表皮を形成するかが調べられた。
また、この培養方法が実際の生体の皮膚でもより厚みのある表皮を作るのかを検討するため、新生仔マウスの傷を付けた皮膚を切除して傷が治るまで培養する手法が確立された。こちらの培養条件も、培地枯渇(2日に1回の交換)と培地潤沢(毎日交換)を設定し、どちらの条件で、傷が治る際により早く厚みのある皮膚を作るのかが検討された。
その結果、表皮細胞は培地枯渇で培養することで、自ら一定間隔で密に集まる模様を作ることが発見された。同模様は培地交換を毎日行うと形成されなくなり、培地に添加されているウシ胎仔血清が枯渇すると形成されることが判明。また、この模様の形成には細胞間接着が必要であることもわかった。さらに、数理モデルによるシミュレーションにより、細胞間接着が十分に強固だった場合、細胞は自ら同様の模様を形成することも解明されたとする。
また、模様を作った表皮細胞は密に集まっているところで分化し、逆に疎に分布している場所では増殖しており、表皮細胞はこの模様の分布に従ってそれぞれの役割を決定していることも判明したという。細胞間接着分子「α-catenin」をノックアウトした細胞では、密に集まって分化する細胞が消失したことから、模様による表皮細胞の役割決定は細胞間接着に依存していることが確認された。
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