北大、皮膚細胞が飢餓状態にあると自ら一定の模様を形成することを発見
マイナビニュース / 2024年7月23日 18時38分
次に研究チームは、表皮細胞における増殖や分化を制御するメカニズムを解明するため、細胞間接着によって制御される分子「Yes-associated protein」(YAP)に着目。YAPは細胞の核内に存在することで細胞増殖に、細胞質内に存在することで分化の方向に細胞を誘導することが知られている。すると、YAPは密に集まる細胞では細胞質内に存在し、疎に分布する細胞では核内に存在することが確かめられ、YAPの局在は密に集まる細胞が分化すること、疎に分布する細胞が増殖するという現象に一致していたとする。
さらにYAPに対しては、その活性化剤と阻害剤を用いることで、模様を作る表皮細胞の増殖や分化がどのように変化するのかが検討され、活性化剤によってYAPは強制的に核内に分布し、分化細胞が減少することが明らかにされた。逆に、阻害剤によってYAPは強制的に細胞質内に分布し、増殖細胞が減少することも示されたといい、以上から、模様を作った表皮細胞における細胞の役割決定には、YAPが重要な役割を果たすことが突き止められた。
表皮細胞から厚みのある表皮を作る3次元培養では、毎日培地を交換する培地潤沢条件よりも、3日に1回培地を交換する培地枯渇条件の方が、より厚みのある表皮を作ることができたという。また、傷を作ったマウスの皮膚の培養でも、毎日培地を交換する培地潤沢条件より、2日に1回培地を交換する培地枯渇条件の方がより厚みのある表皮を作ることが明らかにされた。
今回の研究により、表皮細胞は培地中の血清が枯渇することにより模様を形成することが確かめられた。研究チームは、この模様を形成する培地枯渇培養はより厚みのある表皮を作ることができるため、皮膚を作る再生医療に応用できる可能性があるとしている。
(波留久泉)
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