1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

成蹊大など、25Tの高磁場下で鉄系超伝導材料中で最高臨界電流密度を達成

マイナビニュース / 2024年7月23日 19時1分

画像提供:マイナビニュース

成蹊大学、東京工業大学(東工大)、科学技術振興機構(JST)の3者は7月19日、新材料設計指針である「キャリア密度制御と磁束ピン止め点制御の融合」(以下、「今回の新指針」)により、鉄系超伝導材料「SmFeAsO1-xHx薄膜」を創製し、液体ヘリウムの沸点温度(-269℃)で25テスラ(T)の高磁場下まで鉄系超伝導材料の中で最も高い臨界電流密度を達成したことを共同で発表した。

同成果は、成蹊大大学院 理工学研究科の三浦正志教授、東工大の細野秀雄栄誉教授(国際先駆研究機構 元素戦略MDX研究センター 特命教授)、東工大 科学技術創成研究院の平松秀典教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の材料科学および材料工学全般を扱う学術誌「Nature Materials」に掲載された。

超伝導材料は、電気抵抗ゼロで大電流(臨界電流)を流せるが、その臨界電流密度を使った応用に実用可能な領域は、臨界温度、不可逆磁場および臨界電流密度の3つのパラメータによって定められる。その応用の幅を広げるには、いかにその領域を広げられるかが重要だ。

そうした中で、多くの超伝導材料において特に大きな課題となっているのが、磁場中臨界電流密度の飛躍的な向上だ。これまでの研究より、超伝導体内に侵入する量子化磁束の運動を抑制する磁束ピン止め点(非超伝導相)の導入が臨界電流密度向上に有効であることは理解されていた。

それに対して研究チームは、臨界電流密度の理論上の限界である対破壊電流密度の向上が、臨界電流密度の向上に大きく影響することを、銅酸化物高温超伝導材料「YBa2Cu3Oy薄膜」について明らかにしてきた。また近年の研究により、対破壊電流密度を向上させるためには、チューニングパラメータであるキャリア(電子)密度、化学圧力やひずみなどを制御することが鍵であることもわかってきたという。そこで今回の研究では、SmFeAsO1-xHx薄膜の水素注入量を調整してキャリア密度を制御し、その上で磁束ピン止め点を導入する今回の新指針による飛躍的な磁場中臨界電流密度の向上を目指したとする。

そして、注入元素として従来のフッ素ではなく水素を選択したことで、SmFeAsO1-xHx薄膜への3倍以上のキャリア密度注入に成功し、対破壊電流密度および臨界電流密度(外部磁場無し)を飛躍的に向上させることに成功したという。さらに、プロトンビームを照射することで、高密度な磁束ピン止め点導入に成功した結果、磁束ピン止め点を導入したSmFeAsO1-xHx薄膜は、鉄系超伝導材料の中で世界最高レベルの臨界電流密度を得ることに成功したとのこと。キャリア密度制御と磁束ピン止め点制御の融合により創製されたSmFeAsO1-xHx薄膜は、-269℃で25Tの高磁場下においても、鉄系超伝導材料の中で高い磁場中臨界電流密度を達成。これは、超伝導材料の中で最も臨界電流密度が高いYBa2Cu3Oy薄膜に匹敵する特性としている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください