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早大など、進化の過程で失われた可能性がある幻のタンパク質構造を発見

マイナビニュース / 2024年7月23日 19時11分

画像提供:マイナビニュース

早稲田大学(早大)と理化学研究所(理研)の両者は7月19日、進化のミッシングリンクとなる新しいタンパク質構造を発見し、これを用いることで、遺伝子発現系に重要なタンパク質構造の進化を実験的に再現することに成功したと共同で発表した。

同成果は、早大 人間科学学術院の八木創太講師(理研 生命機能科学研究センター(BDR) 客員研究員兼任)、BDRの田上俊輔チームリーダーらの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

細胞内の遺伝子発現機構では、DNAから転写反応によりRNAが作られ、RNAの翻訳反応によってタンパク質が作り出される。これまで、同機構の詳細な制御の仕組みについて数多くの研究が行われてきたが、太古の地球上で同機構がどのようにして成立してきたのかについては、まだ多くの謎が残されているという。

転写反応ではタンパク質の一種の「RNAポリメラーゼ」が、翻訳反応では、RNA・タンパク質複合体の「リボソーム」がそれぞれ重要な役割を担う。それらは巨大な構造を持つが、初期の生命が最初からそのような複雑な分子を持っていたとは考えにくく、当時はもっと小さくて単純な分子だったと推定されている。

両者の共通項は、小型の「βバレル型構造」を重要な構成要素として有している点だ。たとえば、RNAポリメラーゼの活性コアを形成する「Double-psiβ-barrel(DPBB)構造」、リボソーム「L3」が持つ「RIFT構造」、複数のリボソームに高度に保存される「OBフォールド」や「SH3フォールド」などが挙げられる。これらの構造は部分的な類似点も多いことから、その進化的関係性についての議論がなされていたが、これらのβバレル構造間のアミノ酸配列の違いは大きく、実際どのようにして多様なβバレル構造が進化してきたのかは未解明だったとする。

そうした中で早大の八木講師らは、DPBB構造が7種類のアミノ酸を43個をつなげた単純なペプチドで再構成できることを実証。この単純なペプチドは水溶液中では特定の構造を形成できないが、マロン酸やリンゴ酸などの有機酸を含む溶液中では結晶化してDPBB構造を作ることがわかっていた。そこで研究チームは今回、この単純なペプチドが硫酸イオンを含む条件でも結晶を形成するのか調べしたという。

すると、単純なペプチドが硫酸イオンを含む条件でも結晶を形成し、DPBBとは異なるβバレル構造を作ることが見出された。この構造は、これまで自然界では未発見の新たな構造であり、立体構造を模式的に表すとギリシャ文字のZに似た特徴的なループ構造を2つ持つことから、「Double-zetaβ-barrel(DZBB)構造」と命名された。つまり、この単純なペプチドは同じ配列でも異なる条件では異なるタンパク質構造を作るメタモルフィック(変性作用のある)タンパク質であることが判明したのである。

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