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都立大、性染色体が雌雄の対立を軽減することをハエを用いた研究で確認

マイナビニュース / 2024年7月26日 17時1分

画像提供:マイナビニュース

東京都立大学(都立大)は7月25日、複数のショウジョウバエ種が持つ「ネオ性染色体」と呼ばれる起源の新しい性染色体を用いて、もともと常染色体だった染色体が性染色体になると、遺伝子発現にどのような影響を及ぼすのかを調べた結果、常染色体において雌雄で同じように発現していた遺伝子が、その染色体が性染色体化すると「性バイアス遺伝子」に進化しやすい傾向があることがわかり、またその傾向は特に幼虫において強いことが判明したと発表した。

同成果は、都立大 理学研究科 生命科学専攻のミノヴィッチ あに香大学院生(研究当時)、同・野澤昌文准教授らの研究チームによるもの。詳細は、「Ecology and Evolution」に掲載された。

ヒトの場合は46本23組のうち1組が性染色体で、男性はXY、女性はXXの組み合わせだが、Y染色体のような性染色体は、退化という潜在的不利を抱えている。実際、Y染色体はかつては常染色体だったが、そこに雄化遺伝子などが集積された結果、有害な変異を除去できる組み換えを相方のX遺伝子と行わないため、多くの遺伝子が失われ、今ではY染色体には元の常染色体の有していた遺伝子のうちのわずか3%しか残っていないという。

退化という潜在的不利があるにも関わらず、性染色体を持つ生物が多様化し得た要因(性染色体を獲得するメリット)の1つとして挙げられているのが、「性的対立の軽減」だ。性的対立とは「性的拮抗」とも呼ばれ、雌雄で最適な表現型が一致せず、最適な表現型を巡って雌雄が対立している状態を意味する。

雌雄は基本的に同じ遺伝情報を共有しているため、性的対立に陥ると、雌雄はどちらも最適な表現型を実現できず、表現型はどっちつかずの中間的なものとなる。つまり、性的対立が蓄積すると、多くの表現型が雌雄どちらにとっても非適応的な形質となり、種の存続危機にもなり得ることが考えられるという。そうした中で、性染色体はゲノムで唯一雌雄に異なる選択圧がかかり得る領域(X染色体はその3分の2がメスを通じて遺伝し、Y染色体はオスのみを通じて遺伝する)であるため、性的対立を軽減するのに有効である可能性が提唱されていた。

もしこの考えが正しければ、性染色体を持つ生物は性染色体を持たない生物に比べて性的対立が小さいはずだが、性的対立を測定して種間比較することは非常に困難であるほか、通常、性染色体の起源は非常に古いため、仮に性染色体を持つ生物の性的対立が性染色体を持たない生物より小さかったとしても、性染色体以外のゲノム領域や環境要因による影響を排除できない。つまり、直接的に検証するのは非常に難しいとする。そこで研究チームは今回、性的対立を測定する代わりに「性バイアス遺伝子」を指標として研究を進めることにしたという。

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