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吉川明日論の半導体放談 第309回 終わりがない半導体業界、その引き際を考える

マイナビニュース / 2024年8月5日 14時21分

画像提供:マイナビニュース

AMDがPresident職にあったVictor Peng氏の「引退」を発表した。大企業の要職にある人物の去就についてはその度にプレス発表文が用意されるが、そのトーンにより本人の意思によるものか、内紛/権力闘争などの結果なのかはすぐにわかる。今回の発表文を読む限り、CEOのLisa Suに次ぐナンバー2の人物であるPeng氏の引退は、本人の意思によるものなのは明らかで、業界歴が40年になるPeng氏の業界に対する多大な貢献を大いに讃える言葉が見られる。

1.やり始めると終わりがない半導体業界

Peng氏の40年にわたる業界での経歴は見事なものである。台湾出身で米国の大学で技術を学び、DEC(Digital Equipment)を皮切りに、SGI、MIPS、AMDで数々の要職につき、Xilinxでの14年間で同社をFPGA業界のトップ企業に育て上げた。

AMDによるXilinx買収後も、FPGA技術のAMDへの取り込みを成功させ、現在ではAMDが最も力を入れるAI半導体事業立ち上げの中心的な役割を果たしてきた。1960年生まれとされるので、63-64歳ほどと思われるPeng氏にとっては堂々たる勇退と言えよう。

私自身の経歴はPeng氏と比べるべくもないが、半導体業界に長年勤めた人物の勇退については、感慨深い部分がある。特に、幹部レベルともなると責務の重圧はかなりのものだ。まず重要なのは、刻々と変化する市場の動きについての素早い状況察知能力である。市場からのシグナルは最初はごく弱いものであっても、後にそれが大きな変化をもたらす前兆である場合が多々ある。そして変化を察知したら、間髪を入れずに適切な判断を下しそれを着実に遂行することが求められる。その結果について全面的に責任を負うのは言うまでもない。「変化」が市場の原動力となっている半導体では、こうした大胆かつ細心の判断/決定とその遂行が、ビジネスでの勝敗を分ける大きな要因となる。こうした場面で適切な判断を導き出すためには、何といっても関わる案件への飽くなき情熱と、自身の判断を裏付ける充分な経験が求められる。確固としたリーダーシップを発揮して初めて人が動く。

年間を通して世界を飛び回り、大勢の聴衆を前にして自社技術の優位性を熱っぽく語る。こうした超人的な業務をこなす仕事への情熱を支えているのが、日々繰り返される技術革新だ。集積度/周波数を向上させながら新機能を追加する次世代、そのまた先の世代と、新たなものを常に追いかける技術革新がその中で働く者にモティベーションを与え、「次世代技術の成功を見届けるまでは働こう」という気にさせる。技術革新は日々継続されるので、この行動パターンには終わりというものがない。

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