核融合研など、暗いオーロラでも二次元分光観測が可能な特殊カメラを開発
マイナビニュース / 2024年8月6日 6時59分
2023年5月に、オーロラ帯の直下のスウェーデン・キルナにある同国宇宙公社 エスレンジ宇宙センターにHySCAIが設置された。そして同年9月より、日本からの遠隔操作での観測がスタート。そして今回、オーロラのハイパースペクトル画像を取得(オーロラの二次元像を波長ごとに分解)することに成功したという。
オーロラ発光強度の較正、および設置後に取得した星の位置から観測位置の較正が行われ、ユーザーがすぐにデータを利用できるようにした上でデータは公開中だ。2023年10月20日のオーロラ爆発も観測され、HySCAIを用いてどのようなデータを観られるのかが明らかにされた。その中で、異なる波長の光の強度比から電子のエネルギー推定が行われた。
電子が低速の場合は、高い高度で発光し赤色の光を強く出す。一方、高速の場合は、低い高度まで電子が侵入し、緑色や紫色の光が強く出てくる。HySCAIで観測された各色(波長)に分解されたオーロラの二次元画像により、光の発生する高さの違いで光を生み出す元素が異なるため、色による分布の違いが観測された。このように、オーロラが生み出すさまざまな色の二次元画像が得られる装置の開発に成功した。
赤色の光と紫色の光の強度比から、オーロラを生み出す降り込み電子のエネルギーを求めることが可能であり、HySCAIを使い、今回観測されたオーロラ爆発時の降り込み電子のエネルギーは1600電子ボルト(約1000個分の乾電池の電圧で得られるエネルギー)と見積もられた。これまで知られている値と大きな矛盾はなく、観測が妥当だったことが示されたという。HySCAIにより、降り込み電子の分布やオーロラの色との関係、オーロラの発光メカニズムというオーロラの重要課題の解決に貢献できることが期待されるとする。
今回のシステムは、従来の限られた波長のみを観測する手法の欠点を補うもので、スペクトルの詳細な変化を観測することで、オーロラ研究の進展に寄与するという。一方、核融合プラズマ中においても注目されている、磁場中の荷電粒子と波との相互作用によるエネルギー輸送についても知見を得られると考えられるとしている。今後、国内外の大学・研究機関と協力し、この学際研究を進展させ、世界のオーロラ研究の発展に寄与することが期待されるとしている。
(波留久泉)
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